現在私の工房では、修行の最終章に入った林さんと、新弟子の川口君が一緒に作業しています。 弟子が一人しか居なければ比較するということ自体があり得ない話なのですが、二人になるとついそうした比較(悪い意味ではなく)もしてしまいます。「林さん、この5年間で色々できるようになったなあ」とか、「自分用の色々な道具を揃えたり、作ったりしたもんだなあ」と、感慨深いです。

 というのは、現在の川口君は作業の勉強をするための、その道具さえも無い状態なのです。それをこの6年間で精確な数を数えたことはありませんが数100個も購入したり作ったりしていかなければならないのです。もちろん、購入するだけではなく、その全てを丁寧に改造して高精度に使いやすくしていかなければなりません。現在、林さんが作った道具を見本として、弟子としての作業(勉強)を開始し始めたばかりなのです。

 マラソンのスタートラインにたってみると、ゴール(弟子としての)は途方もないほどの遥か先です。その反対に、林さんはコツコツと、よくここまで走ってきたものです。そして自画自賛になりますが、私もよく丁寧に指導してきたと感心します。それは林さん所有の道具類の精度を見れば、判る人には直ぐ判るはずです。

 マラソンのスタート直後には、ゴールの事など考えてはいけないのです。とりあえず目の前の「あの電柱」までしっかり走ることこそが重要です。川口君にも焦らずに、じっくりと指導しなければと、私自身の心を引き締めるここ最近の毎日です。

 

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