最近は多くの方がネット検索にて「美味しい話し」ばかり探す傾向にあります。例えば、「激安」とか「即納」とかです。事実、私のホームページの検索履歴にも、「バイオリン 安い」とかの検索キーワードはたくさんヒットしています。

 しかし冷静に考え直してみてください。そんな美味しい話しがあり得ますか? 実際にネット上の激安ショップ(明らかに他店よりも安い)の中の多くは、詐欺サイトだったりもします。

 弦楽器関連も同じです。詐欺ではないにしろ、質が悪かったり、技術的責任がなかったり、目先の「美味しい話し」ばかり追いかけていては、後で後悔することになってしまうことでしょう。これは自分でオークションとかで楽器を購入したりする人も同じです。技術的根拠無しに、どうやって楽器を選べるというのでしょうか? プロの私にさえもとても難しい事なのに。

 きちんとした責任のある営業をしている店では、そんな美味しい話しはあり得ません。それは技術の裏返しでもあるからです。例えば、家電販売店を例にとってみると、展示品をたくさん揃えたり、たくさんの販売員を雇って教育して、そしてアドバイスしているようなきちんとした店が、売るだけの無責任な通販業者よりも価格が高くなってしまうのは当然です。技術(人材と店舗)というのはお金がかかるものだからです。

 みなさんも、家電品よりもはるかに高価な楽器や弓だからこそ、目先の「美味しい話し」ではなくて、長期的な損得を考えたうえで購入してください。

 私がアドバイスするとしたら、「購入後も、その楽器店(工房)が10年とか20年とか、長くお世話になりたいような楽器店(工房)なのか?」というポイントです。もしも、それほどの魅力を感じないような楽器店(工房)ならば、販売している楽器もそこそこのはずです。

 その逆に、最初は「ちょっと割高かな?」と思えた楽器や弓でも、本当に素晴らしい楽器店(工房)ならば、その楽器店(工房)に通えば通うほどに、「ここで買って、ほんとうに良かった!」と実感することでしょう。また、使えば使うほど楽器の良さがどんどん増していくはずです。それが本当の楽器の性能なのです。
 一方、目先のおいしさばかりを追って購入した楽器や弓では、購入後に後悔することになってしまいます。

 私の工房でも「『美味しい話し』とか『魔法の技術』は一切ありませんよ!」と念を押します。それは逆に、技術(根拠)の自信でもあるからです。

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