私はこれまで何度も、「しっかりしたケースが重要ですよ!」と主張してきました。しかし、世の中の流としては、ペラペラな肉厚の軽量ケースを使っている人が日に日に増えています。

 昨日、私の工房のお客様なのですが、歩行中に自動車との事故に遭われたとのことで緊急修理の依頼がありました。その方にお怪我は無かったようなのですが、その時にケースの端の部分が車に轢かれてしまったようです。

 その方は私が一番お勧めしているJAEGERの角形ヴァイオリンケース(前期型)を長く使っていらっしゃるのですが、ケースにはタイヤの黒い跡が付いた以外は、大きなダメージはありませんでした。しかし、残念ながら、中のヴァイオリンの表板は破損してしまっていたのです。想像以上の大きな衝撃が楽器にかかり、楽器がケース内部で強く暴れてしまって、表板が破損してしまったと思います。

 もっとも、これが頑丈なJAEGERのケースでなかったのなら、ケース自体が潰れてしまったか(もちろん内部の楽器も修理の効かないくらい潰れたことでしょう)、またはケースが跳ね飛ばされて仮に潰れなかったとしても、最近流行の軽量ケースの内部の構造では、楽器がケース内部で大きく暴れてしまって、今回以上の大きな破損に繋がったことでしょう(自動車の衝突試験で、ダミー人形が車中で考えられないくらい飛び回るのを思い浮かべてください。衝撃は想像以上の大きなものなのです)。

 皆さんにとっては、楽器の大きな破損事故(自動車事故以外も含めて)は自分にとって確立の低いことと思うことでしょう。しかし、決して珍しいことではありません。

 その時のために、普段から多少重くても、または多少高価でも、良いケースを使っているべきなのです。ご自分の大切な楽器なのですから。

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