マイスターのQ&A

ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

Q:「ゴールドブラカット」? それとも「ゴールドブロカット」?

A:これらのどちらの呼び方でもかまわないと思います。弦の袋には確かに"brokat"と記載されています。従ってこれを自然に読むと「ブロカット(またはブロカート)」になります。しかし、業者間では「ブラカット」と呼んでいます。このどちらが正しいとかの答えはないと思いますので、余り気にする必要はないでしょう。ちなみに"Goldbrokat"とは直訳すると「金襴緞子」です。ゴールドブラカット0.26弦の、きらびやかで、しかしギスギスしていない音を表現したのでしょう。

 余談ですが、私がドイツに住んでいた時の話しです。ヘレンキームゼー宮殿に行き、ドイツ人ガイドの説明を受けていたところ、「…ルートヴィヒ14世が…」と説明しているのです。最初私は「へえ、ルートヴィヒ2世の子孫がいるのかな?」と思ったのですが、ガイドの話しを聞いている内に、それが「ルイ14世」であるということがわかりました。
 各国が混じり合っている西洋において、発音の仕方・差など日常茶飯事で、大して気にも留めていないようです。ゴールドブラカット(またはブロカット)の呼び方も、どうでも良いことだと思います。

0.27タイプに注意
 ところでゴールドブラカットには0.26(黄色)と0.27(黄緑)の2種類があります。これは弦の直径の違いで、それはすなわち弦の張力の差と考えてください。0.26がスチール弦の割に優しくて品の良い音がするのに対して、0.27はもっと強い音がします。従って、0.26の音の張りに不満な方が、特に疑問も持たずに0.27を使っている場合が多いのです。しかし、私はゴールドブラカットの0.26が素晴らしい弦であると思うのに対して、0.27は良いとは思えないのです。弦の剛性が高すぎて、倍音成分に乱れが生じているのです。すなわち、音が汚いのです。
 ゴールドブラカット0.27の張力と似た張力を持つ弦に、ピラストロー社のオリーブエンド弦のE線があります。こちらの弦は0.27と同じく強い弦なのですが、倍音成分の乱れが非常に少ないのです。従って「強さがあるが品が良い」という優れものです。もし現在0.27を使っている方がいらっしゃれば、一度オリーブのE線に換えてみてはいかがでしょうか?オリーブのE線はゴールドブラカットの0.27(0.26も)に対して価格が4倍くらいするので、同じ土俵で比較することには無理があるのですが。

Q&Aに戻る