マイスターのQ&A

ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

Q:Mach Oneという肩当てについて教えてください

A:Mach Oneという肩当ては最近(2000年)発売された肩当てです。その音色的性格の是非は別として、かなり特徴的な肩当てですから、楽器の特徴や目的とする音色とマッチすれば、かなりの効果を発揮できるかもしれません。

Mach One肩当ての特徴
 Mach One肩当ての特徴は、一言で言えば「軽さ」です。写真では判らないかもしれませんが、非常に薄い楓の板でできています(プラスティックタイプもありますが、市場で見かけるのはほとんどが楓材製です)。そしてこれは、これまでのブリッジタイプの肩当ての中では異色とも言える軽さなのです。参考のために、ポピュラーなブリッジタイプの肩当ての質量を記載します。
*Mach One--------32.5g
*Kunスーパー------53.0g
*VIVA LA MUSICA---67.0g
 この「軽さ」は、楽器にもよりますが、多くの楽器の場合には「明るい音」につながります。その理由は、楽器の周辺部分の振動を阻害しないから、高い音域の倍音成分が出るようになるのです。その「明るい音」が即、音量の増大に繋がるわけではありませんが、明るい音は遠くまで届きやすく、すなわち相対的に音量が増したような効果が期待できるわけです。
Mach Oneの欠点
 Mach One肩当てがかなり特徴的な肩当てで、うまく使いこなすと大きな効果が出るということを上では書きましたが、これはこの肩当てが「万能」と言っているわけではありません。例えば、元々が明るい音色、または少々キンキンする音の楽器にこの肩当てを付けたとしたら、その音色はヒステリックになりすぎて逆効果になってしまうことでしょう。
 また、音色の面以外にも、この肩当ての欠点はあります。それを挙げてみましょう。
*値段の高さ:KUNスーパー肩当ての2倍くらいの価格です。
*その構造上肩当ての角度が変わらないので、人によっては合わないこともある。
*薄い板でできているために、割れやすい。
*板に貼っている黒色のスポンジが剥がれやすい(ずれやすい)。
*楽器から外れ、楽器を傷つけてしまいやすい。

 特に最後の欠点は致命的です。このMach Oneの脚部分はプラスティックでできている独特の構造をしているために、楽器との相性によっては(と言うより、ほとんどの楽器において)、外れやすいのです。そこでお勧めする方法は他の肩当て(KUNやVIVA LA MUSICA)の脚ネジ部分を抜き取って、交換する方法です。こうすることによって、Mach Oneの音色は僅かに変わってしまいますが、楽器を傷つけてしまうという最悪の事態は防ぐことができるのです。



追記(2004.4)
 このレポートを書いてから数年経ちましたが、MachOne肩当てが刻々とマイナーチェンジをして当初よりも重くなってしまいました。このために最近では発売当初と異なり、「圧倒的な軽さ」とは言いきれなくなっているのが現状です。その為に今回は「MachOneの軽量化」というレポートを書いてみましたので、そちらも読んでみてください。

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