マイスターのQ&A

ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

Q:弓のフロッシュの金属が錆びて困ります。

A:フロッシュに使われている部品が「銀」なのか「洋銀(銅合金)」か、または「金(合金)」なのかで錆び方には違いが出ます。特に洋銀製のフロッシュの場合には、錆びることは仕方ないと考えるしかありません。
 これらの錆は、毛替えの時に綺麗に磨き直しますから、普段はあまり神経質になる必要はないと思いますが、それでも中にはどうしても気になってしまうという方もいることは確かです。
 時々自己流の方法によってこの部分を磨いてしまい、結果的に弓をダメにしてしまう人もいます。絶対に自己流の方法では磨かないようにしてください。これからこの場で簡単な磨き方を紹介しますが、それでもできることならばご自分では行わない方が賢明なのです。
 さて、よく見かける「間違った磨き方」は、「酸」で磨いてしまう方法です。本人は薄目の「酸」なので問題はないと思っているようですが、この「酸」薬品はジワリジワリと金属を腐食し続けます。取り返しがつかない状態になってしまいますので、絶対に行わないようにしてください。
 また、紙ヤスリのようなもので磨いてしまう方もいますが、これも良くありません。金属に傷が付いて、逆に、見苦しい状態になってしまうからです。特に、「銀」フロッシュは柔らかいので、このような行為は厳禁です。

銀磨き剤
 先にも述べましたように弓に使用される金属にはいくつか種類がありますから、正確にはその金属専用の「磨き剤」を使うのですが、基本的には「銀磨き剤」を使います。この薬品は特別なものではなく、DIYショップにおいてごく一般的に売っています。特に彫金コーナーに置いているはずです。

 下写真の左が液体式の銀磨き剤、右上がチューブ式、そして右下が銀磨き布です(シリコンクロスではありません)。これらを使用して弓の金属部品を磨くのですが、注意事項があります。

磨き剤で磨く上での注意
 「銀磨き剤」は液状、チューブ状の薬剤を布やティッシュペーパーに染み込ませて使います。しかし、このまま弓の金属を拭けば済むというものではありません。というのは、それでは薬剤が毛に付着したり、フロッシュの隙間や、黒檀の隙間に入り込み、弓を傷めてしまうからです。また、作業姿勢が不安定で、弓を傷めてしまう可能性も高くなってしまいます。
 すなわち、弓の金属を磨くためには、毛替えの時などに、各部品をバラバラの状態にしてはじめて可能になることなのです。すなわち、一般の方が液状、チューブ状の磨き剤を使用することは不可能と考えてください。
布製の磨き剤
 さて、一般の方が弓の金属を手入れする唯一の方法は、「銀磨き布」を使用する方法です。これならば余計な薬剤で弓を傷めてしまう可能性は少なくなります。
 この布の使い方は、購入時の大きな状態で使ってはいけません。これでは弓の余計な箇所に磨き剤が付着したり、またはか作業中に布がさばって、弓を傷めてしまうからです。布はハサミで、1cm×2cm位の小さな大きさに切って使うのです。
 そして弓の毛など、磨く対象以外の箇所には可能な限り接触させないで磨くというのがポイントです。

 もちろん、不安のある方はご自分で手を出さないことが最良と言えるでしょう。良い弓を壊してしまっては元も子もありません。

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