木材の「木目」の呼び方

2013年2月10日 ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

樹木の成長と木目

 木材には「木目」が付いています。この「木目」とは樹木の「年輪」を縦割りにしたときに出る平行の縞模様です。特に針葉樹の「柾目材(弦楽器の表板など)」においてはっきり確認することが出来ます。
 この「木目」がなぜ生じるのかというと、樹木の生長の速度差によって生まれます。短時間に沢山成長するときには密度が低く、その逆にわずかにしか成長しないときには密度が濃くなります。これが樹木での「年輪」であり、材木の「木目」です。木目(年輪)を観察すると、一年の四季においての樹木の成長過程を読み取ることが出来るとも言えるのです。

光りのスペクトル

 上の写真は弦楽器製作に用いる「ドイツトウヒ」の年輪の拡大写真です。写真下側が樹木の中心で、写真上が樹皮の近くです。樹木の生長点は樹皮の近くにありますから、樹木は中心ほど古く、周辺ほど新しい(若い)木質となります。樹木は、冬が終わり、春になると急激に成長します(この部分が白っぽくなります)。そして夏になった頃成長が遅くくなり(色が少し濃くなります)、秋になると成長速度はかなり鈍くなります(色がとても濃い部分です)。そして冬には成長を止めます(成長していないので、年輪幅はほぼありません)。上写真の下から上へと時間を進めて、木材の成長速度を意識に乍ら観てください。


木材の「木目」の呼び方

 通常木材の「木目」を呼ぶときには「冬目(濃い部分)」と「夏目(明るい部分)」と言うこと多いです。私が経験した範囲ですが、我々の業界でもほとんどの技術者は「冬目」とか「夏目」と呼んでいると思います。しかし、先ほど説明しました通り、明るい部分は「春目」であり、濃い部分は「夏~秋目」なのです。そして「冬目」の部分はありません。
 「木目」の呼び方にムキになる必要はないのですが、これから新たに勉強していく若い技術者のために、我々も間違った呼び方は正して、正しい木目の呼び方を使うべきと思い、今回のレポートを掲載しました。これから勉強する若い技術者達は、わざわざ間違った呼び方で覚える必要はありません。


色の明るい部分=早材(春材)
色の濃い部分(縞)=晩材
 

 

余談

余談になりますが、先ほど書きましたように、「木目」には向きがあります。縞がぼけている方が木材の中心なのです。通常弦楽器の表板は「ミカン割り」した正目板を2枚、中心で接ぎ合わせて用いています。こうすると、楽器の中心は、樹木で言うところの樹皮側です。
 さて、なぜ「木目の向き」が重要になるかと言いますと、大きな修理において新しい板を貼り合わせる修理をすることもあるのですが、この時に木目の向きを(縞のぼけている方向)オリジナルの木目の向きと揃えないと、縞の模様に違和感が出てしまいます。新作製作においても、バスバー材などを表板の木目と同じ向きに合わせて用いると理想的なのです。

 

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