先日、初めての方が弓を探しているとのことで、工房にいらしてくださりました。

 それで早速、いつもの通り「弓の性能の理論」の話をするために、まずは現在使っているヴァイオリンと弓を拝見させてもらったのです。

 ところが、そのヴァイオリンにはプレーン(裸)のガット弦が張られていました(全弦ではありませんが)。

 「なぜ、こんな特殊な弦を?」と質問したところ、「メニューインが好きで、彼がプレーンガット弦を使っていたらしいので、取り寄せて張ってみました」とのこと。

 趣味で行っていることなので、私もそれを全否定はしませんでしたが、しかし、私にとっては?????です。

なぜなら
1. あなたはメニューインではない。またメニューインの技術力もない。
2. 楽器のクオリティーが、プレーンのガット弦を張るような楽器ではない。
3. 時代が違う。

 上記の全てが、致命的なのです。1.と2.に関しては、皆さん判ると思います。そして3.の意味が判るでしょうか?

 例えば、ある超有名なカーレーサーが、フェラーリのクラシックカーで伝説の走りをして、連戦連勝したとします。

 なぜその「クラシックカー」に乗ったと思います?

 それはその車が、その時代でベストの選択だったからなのです。けっして「クラシック」ではなかったのです。

 これは楽器おいても全く同じです。現代における様々な価値観の中で、楽器の基準も変わっているのです。だから、弦だけをプレーンガットに張り替えただけで、「メニューインの音」にはならないのです。もしもそれを目指したいのだったら、時代を巻き戻すくらいの覚悟で、全てにおいて追求しなければなりません。

 そして当然の事ですが、私のお勧めする弓も、プレーンのガット弦には全く合いませんので、試奏をお断りしました。プレーンガット弦(またはバロック奏法)においては、圧力で弾くことはマイナスになってしまうからなのです。

 

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