私は今58歳です。職人人生としては「後期」だと思います。

 20歳~35歳くらいの「前期」は全てが勉強の時期で、若気の勘違いなどもありますが、頭の回転がよく、身体の瞬発力もあります。吸収力もあります。新しい事を、抵抗なく取り入れる事が出来ます。

 35歳~55歳くらいの「中期」は、技術の充実期です。心技体の全てのバランスが取れています。

 55歳~くらいの「後期」は、老眼をはじめとして、若い時の自分と比べて身体のあちこちに「衰え」を感じます。根気というか持続力も無くなっています。特に、頭の回転が鈍くなっているのを実感します。これは私だけの話ではなく、全ての人が同じだと思います。変なプライドを持ってしまうのもこの時期かもしれません。

 58歳の今、職人として「年齢に伴う衰えはしかたない」と諦める自分と、それに(少しは)抵抗する自分も存在します。

 つい先日、「フリクトル3」という潤滑剤を弦楽器調整に利用する事を思いついて、試行錯誤の末に、現在活用しています。ネジの微妙な滑り具合の話なので、殆どの方には「それがどうした?」程度の事に思うかもしれませんが、私にとっては技術のある微少部分での革命的な出来事だったのです。この歳になると、新しい技術だとか道具をお金を掛けて購入したり、試したりすることは少なくなるものなのです。

 普段から好奇心と向上心をもっていたからこそ出来た、ごくごく小さな技術向上です。この歳になって、新たな技術を手に入れたことは、自分の自信にもなります。

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