以前にも書きましたが、演奏家とは演奏のプロであって、楽器に関しては素人です。なぜなら専門技術も知識も習っていないからです。

 これは技術者の私が演奏において「ド素人」だと言い切れるのと同じなのです。そしてそれは恥ずかしいことではありません。なぜなら、実際に私は演奏の専門技術も知識も習っていない、素人なのですから。

 さて話をもどします。

 現在お預かりしているチェロは本格的な調整は長いことしていなかったようなのですが、楽器本体の縁の部分(チェロを横にして置いた時に床に当たる部分)にセロテープみないな透明なテープ(?)が貼られているのです。

 所有者の方は「昔、先生にそうするように勧められた」と言っていて、私に気軽に「これもついでに剥がしておいてください」と依頼してきました。そこまで深刻な話ではないように感じました。

 ところが、実際に剥がそうとしたら大変な作業なのです。テープ(?)が固くなってもろくなり、さらに接着剤部分もニスに張り付いてしまっています。

 溶剤で溶かしたり、ルーペで拡大しながら地道に剥がす作業を繰り返して、半日掛けてようやくそれっぽくなりました。

 そのように行うように勧めた先生や、それを実際に行った所有者は、もっと気軽に考えて楽器に良いつもりで行ったのでしょうが、専門的には間違った行為です。

 素人考えで、自分で楽器への操作を行ってはいけません。お金がかかっても、楽器の専門家(技術者)に任せましょう。我々専門家とはお金をぼったくる人ではなくて、一般の方が持っていない技術や知識を持っているから「専門家(技術者)」なのです。だからお金もかかるのです。

 これは演奏(レッスン)でも全く同じです。きちんとした先生につくことは(もちろんお金がかかります)、自分独りでどんなに練習していても絶対に見えてこないような専門的アドバイスを受けることが出来るのです。すなわち上達への最短距離なのです。

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