最近ではミラーレスカメラだとか、シネマカメラなどのフルサイズ(またはAPS-C)素子のビデオカメラが手に入りやすい価格帯に下がり、それにともなってそのようなカメラで撮影したと思われる演奏会の映像も増えました。

 以前は、このような大きな撮像素子は映画用の超高級シネマカメラで、一般人が買えるビデオカメラではありませんでした。

 それではそのような大型素子のカメラの特徴は何かというと、背景が綺麗にボケて、雰囲気の良い映像が撮れることです。さらに色や輪郭の具合も「シネルック調」です。

 「雰囲気が良い」のです。「印象的」、「作品画的」なのです。

 それはどういうことかと具体的に言えば、フォーカスを合わせた場所だけを強調して、それ以外をぼかすのです。すなわち、映画製作者の意図するところに、視聴者の眼を引きつける操作が行えるので、「雰囲気」だとか「作品の意図」を感じさせる事が出来るのです。

 映画(またはCM)の場合には、このような視線誘導、すなわちフォーカスの移動がとても効果的です。だから古くから、映画撮影にはテレビ用のビデオカメラではなくてシネマカメラが必須とされていたのです。

 ところがそんな大型素子(例えばフルサイズとか)のビデオカメラを演奏会撮影で使うと、弊害もあります。

 それは「映像雰囲気」のおしきせになってしまうのです。

 演奏会の映像では、あくまでも主役は音楽であり、映像のどこを見るかは視聴者の判断に任せるべきなのです。しかし、フルサイズのカメラの映像だと、どうしても背景がボケて雰囲気が出ている、すなわち印象の押し売りになりがちです。

 それでは絞りを絞って、被写界深度を深くしたら良いと思われるかもしれませんが、フルサイズカメラでは中望遠側ではなかなか被写界深度は深くならないです。

 そういった意味で、フルサイズカメラだとか、シネマカメラは演奏会撮影にはベストとは言えないのです。もちろん、使っていけないことは無いのですが、「雰囲気・印象のお仕着せ」には注意すべきです。

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