楽器記録用としてデジカメの利用
2000.4.17 ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗
200〜300万画素のデジカメになると、性能的にも十分利用できるものとなっています。今回はデジカメの特徴を利用して、楽器の記録用途として利用方法を紹介します。余談ですが、著書「弦楽器のしくみとメンテナンス」の写真も、全てがデジカメにて撮影したデータを使っています
- デジカメの利点
- マクロが標準装備
- いくらデジカメの性能が上がったとはいえ、最も高精度で楽器を撮影しようとした場合には、デジカメの性能はポジフィルム(スライドフィルム)の足下にも及びません。しかし、こと我々、撮影に関しての素人の撮影と範囲を絞った場合には、デジカメを利用する利用価値は大きいのです。
楽器撮影用としてのデジカメで一番便利な点は、標準装備で「マクロ」が付いていることです。すなわち接写が利くのです。これは楽器の記録用途として無くてはならないものだからです。もちろん一眼レフカメラなども、マクロレンズを購入すれば接写はできるのですが、その様な特殊レンズを持っている方はずいぶんと数少ないことでしょう(特に楽器関連職業の人では)。
- 多数撮影することで、「まぐれ当たり」を狙える
- デジカメでの楽器の接写において最も重要なことは、何枚でも撮影できて、その場で露出やピントなどの撮影の出来を確認できるということでしょう。プロのカメラマンの場合、「露出計」、「確認用のポラロイドカメラ」、「露出やピントを様々に変えての数多くの撮影」、そして何よりも「技術」によって、最高の品質の撮影を行うことが出来ます。しかし素人撮影の場合には、機材的にも、撮影枚数的にも(現像値段の意味で)、そして技術的にも劣ってしまいます。しかし、これがデジカメでの撮影になりますと、とにかく「数打つ」事によって、その中で「まぐれ当たり」を狙うことが可能になるのです。特に接写の場合には、ピントと露出がシビアになります。従って我々のような素人撮影の場合には、意図的に「まぐれ当たり」を狙うしか方法が無いのです。しかし、これも立派な技術(?)です。デジカメでの撮影においては、これが出来るのです。私はデジカメの、最大の利点と考えています。
- デジタルデータとして保管
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楽器の記録用途として考えた場合、デジタルデータとして保管できる事はとても便利です。場合によっては、楽器修理の過程をメールに添付して送ったり、またはフロッピーに入れて渡すこともあります。
- 実際の応用(ラベル撮影)
- さてここではデジカメとリングストロボの組み合わせによって、「ラベルの撮影」を行ってみましょう。ラベルを撮影するためには、「いかに影を作らないか」が重大な問題になるのですが、そこで活躍するのが「リングストロボ」です。このストロボは発光部分がリング状になっているので、影が出にくい特殊なストロボなのです。
さて、撮影に利用した具体的な機材と、その購入価格を参考のために書いておきます。これは2000年3月時点でのものです。特殊な機材の割に、そこまで高価ではない(デジカメ本体は高価ですが)ということに気が付いていただけたと思います。
デジカメ本体:EPSON CP-900Z(約330万画素) 8〜9万円
リングストロボ:SUNPAK DX-8R 購入価格2万円
ステップアップリング:46mm→52mm 約700円
- 先にも述べましたように、接写撮影においては「自動露出」は利きません。全て露出の設定、ピントの設定を手動にして試行錯誤しなければなりません。しかし、多数枚撮影した中で偶然にでも良質なものが存在すれば、それでよいのです。
以下の2枚の写真は上記の機材によって撮影しました。ラベル(楽器)自体は、たまたま手元にあった楽器を撮影しただけですので、特に意味はありません。しかし、このデジカメの撮影解像力は、きちんとラベルがコピーによって作製されたものであるということまで写し取っています(Webでは画像を縮小しているので分かりにくいかもしれませんが)。
2枚のラベルの写真中、上側はマクロの広角側で撮影したものです。楽器に接するくらい近づいて撮っていますので楽器本体は白飛びしていますが、広角で撮った分、ラベルも広範囲で撮影されています。
- 一方下の写真は、マクロの望遠側で撮影しました。楽器から少し離し気味に撮影しています。このために、表板の表面の露出もある程度はあっています。また、レンズによるラベルの歪みも殆どありませんので、こちらの方がより正確と言えます。しかし、どうしても「一部分」しか撮影できません。