アジャスターの加工による軽量化

2013年5月21日 ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

アジャスターの軽量化

 丁寧な弦楽器製作においては、全ての部品や材料を、強度は落とさない範囲で、無駄な肉付きを取り去ります。実に地味な作業なのです。それぞれの部分、部分で見た場合には、それらの加工による効果は誤差の範囲でしかないのですが、しかし「ちりも積もれば・・」で、総合的に見ると楽器は軽くなり(しかし強度は落ちていません)、音の発音も良くなるのです。もちろん楽器が軽くなるので、弾きやすい楽器にもなります。
 アジャスターも同様に、軽量化の加工を行います。無駄な肉付きを削り落とし、さらに、がたつき防止のために、アジャスターとテールピースとの接地面がピッタリになるようにアジャスター側を削るのです。雄ネジ部分も僅かに短くします。こうすることで下写真の様に、アジャスターは一回りコンパクトになります。もちろん、強度的に問題ないと思われる部分だけを時間をかけて丁寧に削り去っています。ちなみにアジャスターを削る意味は、音響的以外にも、将来何らかのトラブルがあって駒が倒れたりしたときに、アジャスターで楽器を傷つきにくくするという効果もあります。
 さてこのようにして、何グラムの軽量化が行われたかというと、左側の未加工のアジャスターの質量が3.60gで、加工したアジャスターが3.34gです。手間をかけて、僅か0.26gの軽量化です!ここだけ見たら「誤差の範囲」または「気持ちの問題程度でしかないのですが、この操作を「全て」に行うと、確実に違いがでてくるのです。

アジャスターの加工

 
 

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