楽器のラベル撮影 その4
2012年2月3日 ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗
楽器のラベル撮影の試行錯誤
私はこれまでに楽器のラベル撮影方法について、色々と試行錯誤してきました。それらは下記のレポートに書いています。
・楽器記録用としてデジカメの利用
・一眼レフデジカメによるラベル撮影
・ラベル撮影のさらなる試行錯誤
楽器のラベル撮影のポイントと難しさは、「可能な限りラベル全体写すこと」「高画質な撮影」です。一見簡単に思われるかもしれませんが、狭いf孔の穴からラベル全体を、さらに高画質で撮影することはかなり難しいことなのです。
ラベル撮影は基本的には「接写(マクロ撮影)」という撮影技法です。接写を簡単に行いたければ、撮像素子が小さいコンパクトデジカメで撮影すれば被写界深度が深くなり、簡単なのはわかっていた事です。しかし、これまでのコンパクトデジカメは画質が悪く、なかなか思うような画質で撮影できませんでした。そこで私は一眼レフデジカメを使って、さらに改造した接写用の中間レンズを使ってラベル撮影を行っていたのです。ところが先日、高校生の娘の誕生日プレゼントとして買ってあげたCanon PowerShot S100というコンパクトデジカメの性能が素晴らしく、「これはラベル撮影に使えるのでは?」と思ったのです。
比較撮影
これまで行っていた方法の、一眼レフデジタルカメラ(改造中間レンズ利用)とCanon PowerShot S100でラベル撮影を行ってみました。
上写真は一眼レフデジタルカメラに改造中間レンズを装着して撮影したラベルです。一眼レフデジタルカメラの画質はノイズも少なく文句無しなのですが、センサーサイズが大きいので原理的に被写界深度が浅くなり、ラベル下側にはフォーカスが合っているのに、ラベル上側はボケてしまっています(絞りを大きく絞ると今度はラベルの写る範囲が狭くなってしまいます)。また、一眼レフの大きなレンズをf孔に近づけるためには、一々弦と駒を外してから撮影しなければならなかったのです。
次はCanon PowerShot S100というコンパクトデジカメで撮影したラベルです。このコンパクトデジカメは、コンパクトデジカメとしては(2012年2月現時点で)「高感度」「広角レンズ」「手ぶれ補正」を備えているデジカメです。そのために、f孔にデジカメを近づけて、ただ単にシャッターを押しただけなのに、このような高品質のラベル撮影をすることが出来ました。これまでの苦労は何だったのかと思うほどの簡単さです。
さらに素晴らしいのは、カメラが小さいので楽器の弦を張ったまま撮影が出来ることです。しかもワイドレンズと小さな撮像素子による深い被写界深度の効果もあって、ラベル全体がくっきりと写っています。画質(ノイズ)も十分なレベルで、これだけ写っていればこれからはデジタル一眼レフカメラでラベル撮影をするメリットは基本的はもう無いと思います。
まとめ
これまでに何度もデジタルカメラによるラベル撮影技法について試行錯誤をしてきましたが、デジカメの技術進歩によって、結局の所「コンパクトデジカメでただ撮るだけ」というのがベストの撮影方法であるという結論に達しました。もちろんコンパクトデジカメであれば何でもよいというわけではありません。今回私が使用したCanon PowerShot S100のような高性能なコンパクトデジカメと、一番上の写真に写っているような、楽器の内部を明るく照らすLED照明が必要となります。しかし、逆の言い方をすれば、「ただこれだけ」です。凄い時代になったものです。
もっとも、一眼レフデジタルカメラの意味が全くないわけでもありません。特殊なレンズ(虫の目レンズ)を装着することで、下のようなさらに広い視野(焼き印まで写っています)を撮影することもできます。