MachOne肩当ての軽量化

2004.4.20 ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

 以前Q&Aのコーナーでも紹介したのですが、非常に質量が軽いMachOneという肩当ては、明るくそしてレスポンスの良い音が出やすくなる肩当てとして、衝撃的なものでした。私も多くの調整においてこの肩当てを併用しています。
 ところが新発売の頃のモデルと異なり、最近のMachOne肩当ては徐々に重くなってしまっているのです。というのは、ギリギリまで薄く軽量化している肩当てだけにトラブルが多かったらしいのです。例えば肩当てがねじれてしまったり、または割れてしまったり、スポンジのパッド部分が剥がれてしまったり・・・。このためにメーカーが頻繁に改良(?)を繰り返して現在に来ています。この改良(?)のために最近のMachOneの質量は発売当初とは異なり、「衝撃的な軽さ」とは言いきれなくなっています。それはこの肩当ての当初の目的からすると残念な事です。
 そこで私は最近、MachOneの肩当てを改造して利用しています。実際には下記の事以外の改造も行うのですが(本体の木を削るとか、雄ネジ部分を切るとか)、それはかなり専門的内容になりますので、今回は皆さんでも行える内容の事だけを書く事にします。

標準状態のMachOne(2004.4時点)の質量は52.0gでした。


 まずは肩にあたるパット部分の交換です。以前のものはもっと薄くて軽いものでしたが、剥がれやすいとクレームがあったのか、最近のものは分厚くなってしまっています。質量を測ったところ10.2gもあります。剥がし方は特に難しい事はありません。シールを剥がすように剥がしてください。


 DIYショップなどで滑り防止ゴムを購入し、適当な大きさに切っておきます。そこに先ほど剥がしたパットはシールのようになっているはずですから、これを上写真のように貼り付けてください。そしてハサミで同じ大きさに切ります。


 切り取った後に、ゴムが破れないように注意しながらオリジナルのパットと滑り防止ゴムを剥がします。おそらく、剥がした滑り防止ゴムの軽さに驚くと思います。2.6gしかありません。
 つぎにこのゴムを肩当てに接着剤で貼り付けます。私は「コニシ社 Gクリヤー(速乾・透明)」という接着剤を使っています。


肩当ての脚は音色に大きく関わります。MachOneオリジナルの脚(上写真の下)も悪くはないのですが、楽器を押さえつけるタイプなので音が細くなる傾向にあります。そこでKun脚(上写真の中)に付け直すのですが、今回はそれを加工して更に軽くします。Kunオリジナルの脚に付いている生ゴムをシリコンゴムに換えることでさらなる軽量化を行えます。


 上写真が改良したMachOneです。オリジナルが52.0gだったので、今回の改良によって8.6gもの軽量化が行えた事になります。実際にはさらなる加工を行う事もあります。

 このような改良は当然の事ながら、そのような肩当てのキャラクターを必要としている楽器にのみ有効です。従って、誰にでもお勧めするものではないという事だけ念を押しておきます。もっとも、確率的には軽い肩当ての方が合っているという楽器の方がはるかに多いので、興味のある方は試してみてください。今回のような「肩当ての加工」の場合、楽器本体への加工と違って、最悪の場合でも肩当てを再購入すればよいと言うだけなので、気楽に行えます。逆の事も言えて、気楽に操作できるのは肩当てぐらいと思っても良いです。


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