ペグのテーパーの角度計算
2011年10月23日 ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗
ペグ穴あけ用リーマーの種類
ペグやエンドピンの穴にはテーパー(角度)が付いています。そして目的によって穴の大きさとテーパーにもいくつかの種類があって、使い分けられます。それらの穴は下の写真ような「リーマー」という専用の道具で調整加工されるのですが、下写真からも、大きさだけでなくテーパー(角度)が微妙に異なっていることがわかると思います。基本的にリーマーの種類には下記のような種類が存在します。
・ヴァイオリンとヴィオラのペグ用(標準): テーパー 1/30
・ヴァイオリンとヴィオラのペグ用: テーパー 1/25
・ヴァイオリンとヴィオラのペグ用(角度大): テーパー 1/20
・チェロのペグ用: テーパー 1/25
・チェロのエンドピン穴用: テーパー 1/17
テーパの計算方法
通常リーマーの「テーパー」は「1/30」や「1/25」などの分数表記で表されます。今回はその分数表記を角度表記として慣れている「度(°)」に変換表記してみましょう。「度」に変換表記することで、製図や旋盤でのテーパー削りセッティングにおいても役に立ちます。
テーパーの計算結果
上記ではわかりやすいように、「ペグのテーパーはθ+θなので」として計算していますが、実際には計算をまとめて計算して「ペグのテーパー = tan-1(1/30)」で一発で求めることが出来ます。
・1/30: 1.91°
・1/25: 2.29°
・1/20: 2.86°
・1/17: 3.37°
この計算結果をみると、通常ヴァイオリンやヴィオラのペグで用いられている「1/30」というテーパーが、わずか2°にも満たない微妙な角度であるという事があらためてわかります。実際の技術では、さらに微妙な角度の変化をつけて、ペグの回る固さや粘りけを調節します。この数値を見ただけでも、いかに高度な技術を必要としているかをわかっていただけたかと思います。