ドイツからのインターネット接続

2000.12.11 ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗


 今回(2000年12月)、ドイツ出張時に初めてモバイル機を持参し、インターネットの接続を試みてみました。その理由は、近年インターネットの普及により、メールでの応対をすることがずいぶんと増え、また、私の仕事の中においてもインターネットが重要な位置を占めるようになってきたからです。
 次に挙げられることは、機中、空港での待ち時間、ホテルでの時間などの時間を効率よく利用するという意味ですからです。事実、現在もミュンヒェンの空港で、搭乗時間を待つ間にこうして書いています。日本で普段の生活をしているときには、他の仕事を行わなければならないために、メールの返事やHPの更新などの時間はどうしても制限されてしまいます。従いまして、このような時間こそが、まさに集中できる時と言えるのかもしれません。

準備したパソコン(PDA)
 今回のドイツ出張にあたって、「ノートパソコン(Windows98)」を持参すべきなのか、それとも「WindowsCE機(下写真中央)」にすべきなのか、最後まで悩みました。ノートパソコンのメリットは、普段のパソコンの環境(使用ソフト、データ)をそのまま持ってくることができるということです。しかし欠点はその重さと、バッテリの駆動時間です。私のノートパソコン(SONY VAIO505)にはオプションのバッテリーが付いてはいますが、それでも駆動時間は最大で5時間くらいです。また、Windowsの起動や終了に時間がかかり、時間を見繕って気軽に作業をするというわけにも行きません(バッテリの消費問題から、サスペンド機能は使えません)。また、オプションの大容量バッテリを装着すると、その重量や機動性は犠牲になってしまいます。
 その様なわけで、今回は私が普段、「文字入力機」として活用しているWindowsCE機を持ってくることにしました。これならば重さはパソコンとは比べものにならないくらい軽く、またバッテリも10時間は保ちます。問題なのは、この機械で何ができるかという事ですが、私の当初の目的である「メール」、「インターネット閲覧」、「HP更新(FTP接続)」はできそうです。あとは必要と思われるソフトをダウンロードして万全を期しました。
 結果的にこの選択は正しかったと思います。空港や機中で頻繁に作業を行いましたが、東京からミュンヒェンのホテルに至るまでバッテリの残量は余裕でした(もちろん連続使用しているわけではありませんが)。また、気の向いたときにバックのポケットから気軽に取り出して、記述作業ができるというのも良いところです。
モデム周辺機材
 肝心のモデムは、PDA内蔵のモデムです。別売の「海外対応カードモデム」と比べると、場合によっては繋がらない事もあると思いましたが、これまでの私のドイツ在住の経験から、ドイツでは大丈夫と判断しました(不安はありましたが)。問題なのは接続ケーブルです。
 ドイツの宿泊価格の高いホテルにおいては、日本と同じようにパソコンが直に接続できるはずです。しかし私が泊まるビジネスホテルには、データポートがあった記憶がありません。下手をすると、電話回線さえも壁に直付けだったかもしれません。そこで、PDAのモデム端子を接続するための機械を秋葉原のパソコンショップにて購入しました。
1・ホテルの電話の受話器ケーブルを外し、この機械を電話本体と受話器の間に接続して、この機械にPDAのモデムを接続する機械(写真左の白い四角の箱。購入価格約\15,000。結果的にこの機械が大活躍しました)。
2・古いタイプの電話で、電話線のどこも外れない場合に、受話器の音を聞き取って通信するための「音響カプラー(写真右の受話器状の物。購入価格約\13,000)」も保険のために購入しました。

アクセスポイントの下調べ
 私の加入しているプロバイダは海外ローミングサービスに加盟していますから、今回はこのアクセスポイントを利用することにしました。まず行ったのは、加入プロバイダに「ローミングサービスを利用する」という登録をすることです。次に、インターネットからローミングサービス(GRIC)のアドレス帳をダウンロードして、ミュンヒェンの幾つかのアクセスポイントの接続データを印刷しておきました(写真中央上)。WindowsCE機では、このダウンロードしたGRICアドレス帳を直接は使えないからです。
 次に行うことは、アクセスポイントの設定です。普段のインターネットアクセス時とは「アクセスID」と「SMTP設定」が異なっていますが、基本的には同じです。
インターネット接続の実際
 ミュンヒェンのホテルにチェックインして、まず最初に壁から電話線が外れるかどうかをチェックしました。すると、外れます。これは「ラッキー!」と思い、さっそくモデムを接続しようとすると、コネクタの大きさが僅かに違います。もっとも、これは事前の下調べにおいて予測していました。ホテルの電話回線は独自規格であることが多く、直にモデムを接続することはできないことが多いらしいのです。
 次に、日本で用意してきた、電話本体と受話器との間に接続する機械を取り付け、アクセスしてみましたが旨くいきません。原因は、一見プッシュ回線のようですが、実際には独自規格のトーン信号を使っているらしいのです。このため、ダイアルは手動で行い、受話器から信号音が聞こえた瞬間にPDA側の「接続」ボタンをクリックすることにしました。ちなみにPDAの接続設定は、ダイヤル発信を行わないようにするために(手動で行うので)、電話番号の欄に「,」だけを入力しました。
 さて、これでも旨く接続できません。少し焦りながら、別のアクセスポイントに接続してみたら、今度はあっけなく接続できました。後で分かったのですが、アクセスポイントは時間帯などによって調子が良かったり悪かったりしますから(例えば接続はできてメールの送信はできたが、メールの受信ができないとか。またはFTPにだけ接続できないとか)、幾つかのアクセスポイントの中から最善のものを選んで接続するのが良いようです。
公衆電話からの接続は?
 ドイツの公衆電話は数種類ありますが、私が知りうる範囲ではモデムポートを持った公衆電話はありません。従ってドイツでインターネット接続をしようとすると、ホテルから接続するしかないと思います。当初は、最悪の場合には公衆電話から音響カプラーで接続しようとも考えていたのですが、周りを気にしながらの接続は現実的ではありません。また騒音の問題で、旨く接続できないかもしれません。
 最近ではドイツでも「インターネットカフェ」が流行っているようですから、こちらを利用するのも手かもしれません。ミュンヒェンでも、中央駅の目の前に(郵便局横)大きなインターネットカフェ(ここはカフェではありませんが)が新しくオープンしていました。
 一方、アムステルダム空港の公衆電話はモデムポートが付いているのですが、どうやったら掛かるのかさっぱり分かりません。クレジットカードでも発信できるようなことがかかれているのですが、どうも旨くいかないのです。周りを見回しても、うまく電話がかけられずに首をひねっている旅行者がたくさんいました。オランダのテレフォンカードが近くに売っている雰囲気でもないし、困ったものです。ただ、モデムポートが付いているだけ素晴らしい事です。
 また、下写真のように、キーボードが付いていて直接メールの送受信ができる公衆電話もありますが、これはあまり実用的ではないと思います。事実、キーボードを押している人を全く見ません。

実際に使ってみて
 今回は初めての海外からのインターネット接続経験でしたので、その準備にかなりの時間と費用(接続機材の購入)もかけました。しかし、その苦労も吹き飛んでしまうくらいに便利だったというのが正直な感想です。
 今までならば家族との連絡には国際電話をかけていましたが、それがメールで済んでしまいます。また国際電話だと最低限の会話しかできないのが、細かな内容のことも記載できます。またPDAに付属のカメラで、簡単な写真も撮影して添付することもできます。ほんの1週間の留守ですが、我が家(顧客からの電話などの状況も含め)の状態が手に取るように分かるようになったことがとても便利に感じました。
 もちろん受信した顧客からのメールに直接返事を書けたり、また、それ以外の記述仕事に利用できたということが最大のメリットに思えました。
 最後に、WindowsCE機とノートパソコンとのどちらを持ってくるべきだったかという感想ですが、今となってはWindowsCE機以外には考えられないというのが正直な感想です。ノートパソコン(いくら小型のタイプでも)では、ここまで気軽に使えないからです。また、旅行中に行える作業自体も、今回WindowsCE機で行った内容で十分(または限界)と考えられます。