マイクの周波数特性の比較

2002.8.18 ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

 これまで私は音響実験用のマイクとして「SONY ECM-23F2」を利用してきました。その理由は「高価でない」、「入手しやすい」、「比較的癖のない音がする」、「アンバランス入力なので扱いやすい」といったところです。専用の音響測定用マイクの方が良いにはきまっていますが、測定のレンジ、誤差などを考慮した上で、あえてこのマイクを使っていました。当然、一番の理由は価格的(経済的)理由からです。
 ところが最近、実験装置を一新し、測定周波数レンジが48KHzまで広がりました。それによって、これまでのマイク(SONY ECM-23F2)の性能が足かせになってきたのです。そこで音響測定用のマイクを捜しました。当然の事ながら、専用の音響測定用マイクは多数存在することは知っていましたが、問題なのは価格が非常に高いということです。例えば30万円位する音響測定マイクでしたら50KHzくらいまでのフラットな周波数特性をもちますが、一個人で購入できる価格ではありません。そこで、現実的な解決策として「コストパフォーマンス」を重要視しました。

BEHRINGER社 ECM8000

 この音響測定マイクは知る人ぞ知る「超ハイコストパフォーマンス測定マイク」らしいです。購入価格が5,000円(ケーブルは含まず)くらいなのです。そこで私は「こんなに安くて、本当にまともな性能があるのか?」ということが先ず頭に浮かびました。BEHRINGER社自体はきちんとした信頼おける音響メーカーのようですし、こればかりは試してみなければ一歩も進みません。そこでまずは購入して、これまでのSONYのマイクとの比較をしてみました。

SONY ECM-23F2の周波数特性グラフ


比較実験
 マイクの比較実験は、2本のマイクをピッタリ並べてセッティングし、ヴァイオリンのE弦のハイポジション位置を弓で演奏し、その倍音特性を同時に計測しました。ちなみに、楽器からマイクまでの距離は40cmくらいです。
 上のグラフがSONYで、下のグラフがBEHRINGER社"ECM8000"の測定グラフになります。これらを見ると、各マイクの添付周波数特性表から想像できる結果であるということが判ります。ECM8000の周波数特性はフラットで、周波数レンジも明らかにSONYのマイクより広いということも判りました。従って値段の割にはきちんとした「音響測定マイク」であるという面目は保てたわけです。とは言え、30万円もする音響測定マイクとは違い、測定レンジはどんなに頑張っても(周波数特性補完しても)40KHzくらいが限界のようです。20KHzまでのレンジにおいては「フラット」と言ってもよいでしょう。
 また一方、20KHz以下の測定においては、今までのSONY ECM-23F2での測定が明らかに的外れではなかったということの証明にもなったわけです。とにかく、BEHRINGER社"ECM8000"のコストパフォーマンスには大満足です。

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