マイスターのQ&A
ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗
Q:「古い楽器」とは何年経ったものですか?
A:答えはその楽器の寿命(推定寿命)と関係してきます。「楽器の傷み具合」と関わっていると言ってもよいかと思います。すなわち、何年経った楽器が「古い」とは、一概には言えないのです。
例えば、質の低い楽器の場合には、楽器自体の構造的問題、材質、製作精度の問題、取り扱いや修理の程度の問題などによって、僅か数年で楽器はかなり傷んでしまうのが現状です。従って、場合によっては10年間で「古い楽器」となってしまうのです。酷い場合には寿命直前である事も多いのです。
一方、とても作りの良い楽器の場合で、さらに取り扱いや修理の程度が高い場合には、たとえ30年も経ったとしても「新しい楽器」と言えるのです。なぜならばそのような高性能な楽器の場合、楽器としての寿命の視野は100〜200年以上も当然考え得るからです。事実、そのような楽器は構造的、美観的に、実に健康的で美しいものです。