マイスターのQ&A
ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗
Q:弓のグレードは「*」印の数で決まっているのですか?
A:確かに「*」マークの数は、弓のグレードを表しているもののひとつです。しかしその表現は各製作者によっても異なりますし、また弓の性能のほんの一側面でしあかりません。従って、「*」印だけで弓を評価することは非常に危険です。
ここで弓のグレードを表している目安について説明してみましょう。
- 材質と製作の質
- これは弓の本質です。弓のグレードはこれによって決まります。しかしこの部分は専門家にしか分かるものではないので(言葉で説明できるものでもありません)、ここでは省略します。しかし、あくまでもこの部分が一番大切なところです。
- 「*」印
- 「*」印とは、弓竿に刻印(製作社名)に押されている「*」マークのことです。多くの弓においては、「無し(製作者名のみ)」→「製作者名+*」
→「製作者名+**」→「製作者名+***」とグレードに従って星が増えていく場合が多いようです。
しかし注意すべき事は、これらの表現は各製作者によってバラバラということです。例えばある製作者は10万円強のグレードの弓に「***」を付け、一方である製作者は20万円強のグレードの弓に「***」を付けたりしています。または「*」印は全く付けない製作者もいます。それどころか、付けない製作者の方が多いと思います。このように、星の数だけで弓の性能の「絶対値」を判断することは不可能なのです。
また大切なことは、同じ製作者の同じグレードの弓でも、材質のバラツキによって性能の差が大きいということです。これは弓が単純な構造の製品のために、材質(弓竿)の性能のバラツキが、製品の性能のバラツキとしてダイレクトに現れてしまうからなのです。
- フロッシュに差し込まれている「貝板の質」
- この貝にも特徴があります。一般的には「プラスティック」→「真っ白の貝」→「綺麗な色の貝」または「縞模様の貝」など、弓のグレードと共に貝板も美しくなる傾向にあります。
しかしここでも注意が必要です。というのは、製作者の中には「真っ白の貝」をあえて好む人もいるからです。というのは、白い貝は見た目に派手さはなくても、長期間の使用において傷みにくいのです。不均一に溶けたり、部分的にポロポロと剥がれたりしないのです。従って、高級グレードの弓に、あえて値段の安い「白い貝板」を使用する製作者もいるのです。
- 金属の種類
- これは今までに説明しましたので、ここでは簡単に説明します。
弓で使う金属は「洋銀(銅合金)」→「銀」→「金合金」と、グレードによって変化します。ただ「金合金」の場合には、「装飾モデル」的な意味合いの方が多いかもしれません。
弓に使っている金属が「洋銀」か「銀」かの違いは大切です。これは上記の「*」の数や、貝の種類よりも大切なことです。
- 丸弓か角弓か
- これについても既に説明しておりますので、詳しくはそちらを見てください。
簡単に説明すると、大量生産の弓の場合には「丸弓」。中級品以上では丸弓と角弓の形の違いだけの意味では、弓のグレード的に上下はないということです。もちろんそれぞれのバランス的な特徴はありますので、後は好みの問題です。
Q&Aに戻る