マイスターのQ&A

ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

Q:間違った薬品使用によるフロッシュ金属の腐食

A:下の写真を見てください。これは洋銀(銅合金)製の弓フロッシュですが、金属部分が錆びているのではなく腐食しているのです。ネジの部分は細く痩せてしまい、板の部分は板厚が薄くなり、下地が見えてしまっています。
 これは錆を除去しようとして、ほんの僅かな「酸薬品」を使用したと考えられるのです。しかしその結果がこの状態です。酸薬品は使用した当初はこのように急激な腐食は現れません。従って、専門知識を持っていない楽器の所有者や、または 技術者(この写真の弓は後者です)が安易な気持ちで使用してしまうこともあるのです。しかし、酸薬品はとてもしつこく、ジワリジワリと腐食を進行させるのです。こうなってしまうとお手上げです。
 さらにたちが悪いのは、弓を収納するケースにまで酸が染み込んでしまい、他の弓や楽器の金属部品にまで悪影響を及ぼしてしまうこともあるという事です。従ってくれぐれも安易な気持ちで「薬品」を利用しないようにしてください。もしもどうしてもご自分でフロッシュの金属部分を磨きたい場合には、専用の金属磨き剤を用いるようにしてください。

Q&Aに戻る