マイスターのQ&A
ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗
Q:子供にヴァイオリンを正しく持たせるコツは何ですか?
A:初心者の子供がヴァイオリンのレッスンを始めるときに、まず最初にぶつかる壁が「ヴァイオリンを上手に持てない」ということです。そして力任せの無理な構え方をしてしまうと、その後の上達が見込めません。上達しないとはいいませんが、上達の効率が悪く、さらに演奏の各所に無理が生じてしまうのです。
同様のことは大人にも当てはまりますが、今回は子供の分数楽器について書いてみましょう。
このように、楽器を理論的に構えるためには「アゴ当ての引っかかり部分」が必要なのです。しかし多くの分数用アゴ当ての場合には、フルサイズの楽器の縮小版で作られているためにアゴ当てのサイズが小さく、引っかかり部分もフラット気味なのです。もしかすると、力任せに間違って持とうとする小さな子供が、アゴが痛がらないようにフラット気味のアゴ当てが多いのかもしれません。
いずれにせよ、小さくそしてフラット気味のアゴ当てでは、アゴが引っかかりにくいので、理論的な持ち方をすることは困難です。分数楽器の調整においては、まずはこの辺りをきちんとすることが重要なのです。本来ならば、きちんとした分数専用のアゴ当てを装着するのが良いのですが、そのような都合の良いアゴ当てはほとんど見かけません。そこで、次の写真ように、スポンジで「引っかかり部分」を作るだけで、ぐっと持ちやすくなるのです。
上の写真は固めのウレタンスポンジをアゴ当てに貼り付けた後に、ルーターにて形成したものです。この方法は専門の工作機械を使いますので、一般の方には見た目以上に難しい作業です。そこで今回は次の方法を試してみました。
上写真はアゴ当てに貼り付けるスポンジ(裏面がシールになっている)「Soft-pro」を細く切り、それで「アゴの引っかかり」を作ったものです。この製品は上記のウレタンスポンジよりもかなり柔らかなので、最初は役に立つのか心配だったのですが、アゴに優しく、しかしきちんと引っかかりがあるのです。簡単な作業ですから、皆さんも試してみてください。
もしも上記の製品が手に入らない場合には、東急ハンズなどで似たような柔らかめのスポンジ材を購入して貼り付ければ良いでしょう。この加工作業のポイントは、上写真のように細目に切って貼るということです。大きな面積に貼ってはいけません。音も悪くなります。