マイスターのQ&A

ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

:コントラバスの弓で、黒い毛を張ったものを目にしますが、これは普通の弓と違うのですか?

:この事について、すでに気づいていた方も多いのではないでしょうか。そして確かに、黒い毛の弓はコントラバス弓だけに見かけると思います。
 答えから先に申しますと、これは「毛の質」の差からくるものなのです。

白色の馬毛
 ヴァイオリンからチェロまでは、白い毛が張っています。これは別に脱色しているわけではありません。初めからこの色の馬毛なのです。日本でいえば、「道産子」のタイプの馬で(いわゆる「白馬」ではありません)、モンゴル、カナダ、中国、日本などのこの種の馬から採取しています。
 この毛の特徴は、その太さが中くらいで、ヴァイオリンからチェロにちょうどよいのです。逆に言うのならば、「演奏に都合のよい毛を選んでみたら、それがたまたま白色だった」といったころでしょうか。
 もちろんその中にも上質なものや、低質なものがあります。劣悪なものは、脱色したり、摩耗していたり、ちぢれたり、毛が折れ曲がっていたり、節があったり、または太さの不均一なものです。
黒色の馬毛
 この種の馬毛の特徴は、一般的な白色も馬毛よりも「剛毛」ということです。したがって、このような黒色の毛を張った場合、ヴァイオリンからチェロには少々堅すぎるのです。しかしコントラバスの場合には、このくらいの「剛毛」を好む演奏者もいます。ですから、演奏者の好みで白色のタイプや、黒色のタイプの使い分けがあるのです。

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