マイスターのQ&A

ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

Q:「ソロ用」、「オーケストラ用」と書かれて売れられいる楽器の違いは何ですか?

A:確かにこのような表記をされた楽器が売られているのを私も見たことがあります。皆さんの中には「ソリスト用に特別な製作方法で作られた楽器」とか、または「オーケストラ演奏用に最適な調整を施された専用楽器」と思っていらっしゃる方も多いと思いますがそんなことはありません。
 例えば極端な例として「ストラディヴァリ」を考えてみてください。楽器店において「ソロ用」など表記されて売られてはいません。その逆に、ストラディヴァリをオーケストラ奏者が使っても何ら違和感はないのです。

「ソロ用」、「オーケストラ用」表記の意味
 先にも書きましたように、楽器の構造や根本的な調整方法が異なるわけではありませんので、あまり難しく考える必要はないと思います。単なる販売上のセールストークくらいに思ってもよいでしょう。
 具体的には、アマチュア購入者が「この楽器はどのくらいのグレードの楽器なのかな?」と迷うような中級グレードの楽器で、しかも知名度の低いラベルの楽器、またはラベルの無い楽器(または剥がれている楽器)などに併記されていることが多いのです。
 ようするに、「この楽器は使おうと思ったらソロ演奏も可能なくらいしっかりとした質の楽器ですよ」とか、「ソロ演奏までと言いませんが、オーケートラ演奏には十分な性能を持っていますよ。初心者用の楽器とは違いますよ。」という意味です。
「ソロ用」、「オーケストラ用」表記は無視してよいか
 「ソロ用」、「オーケストラ用」、さらに「生徒用」という表記は、低〜中級楽器の単なるグレードを表している程度に思っても間違いはありません。もちろんグレードと言っても、それは楽器メーカーや販売店が勝手に表記しているだけなので、そのグレードがどの程度保証されるのかは何とも言えません。
 その様な意味からすると、上記の表記は無視すべきと思います。それよりも、そのような表記(セールストーク)にとらわれずに、純粋に楽器の性能を見つめる目が必要なのです。
補足
 最初に「ソロ用」、「オーケストラ用」の製作方法や専門のセッティングは無いと書きましたが、非常に高度な意味では存在します。しかしそれは楽器店で売られているそれらの楽器を分類するようなものとは違います。また「ソロ用」、「オーケストラ用」と一言で分類できるような単調で低レベルのものでもありません。全ての楽器において異なりますし、また所有者の好みによっても違ってきます。
 また、中には「音が甲高い楽器がソロ用」で、「柔らかい楽器がオーケストラ用」だと思っている方も多いのですが、それも間違いです。単に音が甲高いだけではソロ用楽器としては通用しません。単なる「キンキンとした耳障りな楽器」になってしまいます(最悪の場合耳を傷めます)。また、音が単に柔らかいだけでは、それも単に「音がこもった楽器」でしかないのです。

 例外として、コントラバスの中にはあえてソロ用として小さいサイズで製作さ楽器も存在します。しかしこのような特殊な「ソロ用」は希と考えても良いでしょう。

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余談
 同様の理由にて、「第1ヴァイオリン」と「第2ヴァイオリン」の構造的な違いも有りません。