マイスターのQ&A

ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

Q:よく量産楽器で、「ストラディヴァリ・モデル」や「グァルネリ・モデル」などと書かれていますが、音が違うのですか?

A:名器の「コピー」には様々な製作形式ものがあります。例えば、その形だけでなく、楽器の傷や割れ、製作上の失敗点などの楽器の短所まで含めてコピーしたものもあれば、楽器の輪郭、f孔、渦巻きの大ざっぱな雰囲気だけをコピーしたものまで、その製作形態は様々です。
 一つだけ共通して言えるのは、これらの「コピー」または「イミテーション」において、古い楽器の音まで本質的な意味でコピーするということは原理的に不可能ということです。すなわち、それらは「見た目」のコピーと考えてください。

量産楽器におけるコピー楽器
 ご質問のように、量産楽器においてよく「ストラディヴァリ・モデル」や「グァルネリ・モデル」という記述を見かけます。ヴァイオリンにおいては特にこの2種類が多いです。
 一般に、ストラディヴァリよりもグァルネリの方が音が明るくて、音量が大きいといわれているので、これらのコピーもそのような特徴があるのかと思っている方も多いのですが、先に述べましたように、音色的にはこれらの「形」によっての差はほとんどありません。それらの「モデル」とは、単に外見上のコピーなのです。しかも、こと量産楽器に於いては、その「コピー」も何となくストラディヴァリの形をしているとか、f孔の形が何となくグァルネリに似ているとかのレベルです。高度な意味でのコピーではありません。まして板の厚みまでコピーしているわけではないのです(名器の板厚はそれぞれでかなり異なるので、コピーのしようがないのですが)。
 すなわち、量産楽器を購入する上で「・・・モデル」という事はほとんど意識しなくても良いと思います。寸法も、ごく標準的な寸法で作られていることがほとんどですから、各モデルによって弾きにくいということはないと思います。
 ただし、「アマティ・モデル」や「シュタイナー・モデル」など、現代となってはその形がかなり特殊な部類にはいるようなヴァイオリン(ヴィオラやチェロの場合には話は別です)のコピーの場合には要注意です。胴体の寸法や、隆起をかなり忠実にコピーした物の中には、現代の演奏に合わないものも存在するからです。しかし、f孔の形や渦巻きの形など、何となく雰囲気だけをコピーしたものの場合には、全く問題はありません。

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