マイスターのQ&A
ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗
Q:家の蔵から古い「ストラディヴァリウス」と書かれた楽器が出てきましたが、本物でしょうか?
A:この様なお問い合わせはとても多いです。楽器は実物を見なければ判断はできないということが前提ですが、限りなく100%近く、ストラディヴァリウスではないでしょう。
- 昔のストラディヴァリウスの価格
- 詳しい資料が手元にあるわけではありませんが、ストラディヴァリウスは300年前の新作の時点で評判が高く、その価格も付加価値は付いていなかったにせよ、とても高かったと考えられます。まして150年前くらいになると、既に現在のような付加価値が付いていますので、現代においてそうであるように、一般の方が手に入れられる価格帯ではありませんでした。
日本においてヴァイオリンが輸入されるようになったのは明治になってからですから、その時にはストラディヴァリウスは破格の値段となっていました。従って、間違ってでも一般の演奏者の手元にストラディヴァリが残っているということはあり得ないのです。
- ラベル
- 楽器に書かれている「ストラディヴァリウス」とは、「ストラディヴァリウス・モデル」という意味です。この様なラベルは、特に初級者用の楽器に貼られていることが多いです。従って逆に言えば、蔵から「ストラディヴァリウス」のラベルの古い楽器が見つかった場合には、その楽器のグレードはあまり高くないというのがほとんどです。
- ストラディヴァリウスである可能性があるとしたら
- 下記の条件の全てが満たされている場合には、もしかするとその楽器はストラディヴァリかもしれませんので、正式な鑑定をするべきでしょう。
・当時、ものすごい資産家だった。
・ヴァイオリンや音楽にのめり込んでいた。
・外国の有名な楽器商や著名なソリストとの交流があった。
・当時、「すごい楽器を購入した」として、新聞などで評判になった。
・その楽器が「家一軒以上の値段だった」等の、言い伝えが残っている。
これらのように、見つかった楽器がストラディヴァリウスである可能性はほとんどゼロなのです。夢を奪うようで申し訳ありませんが、これが現実です。
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