マイスターのQ&A
ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗
Q:点検・調整はどのくらいの間隔でしたらよいですか?
A:楽器の状態や演奏の状況、そして調整に求めるレベルによっても話は違ってきます。従って、「このくらいの間隔で」とは言えません。強いて言えば、「楽器店(工房)に嫌われない範囲で、頻繁に」というのが理想の間隔です。というのは、楽器の点検を頻繁に行うことによって、自分自身が気づかない範囲の楽器の傷みを未然に防ぐことができるからです。
しかし、だからといって余りにも頻繁に楽器店に出入りしていると、楽器店にとっては邪魔なので嫌われてしまいます(本人は自分自身は特別な常連客なのだと思いこんでいることが多いですが)。従って、「賢い頻繁さ」をしなければならないのです。
- 賢い点検(調整)方法
-
例えば、弦一本が切れた時、それを買いに行って「ついでにこの弦を張ってもらえますか?」とお願いすれば、自分の店で買ってくれた弦を張ることを嫌がる店は無いと思います。そしてきちんとした技術者ならば、ついでに楽器をひとまわり眺めて簡単な点検をしてくれる事でしょう。インターネットなどの通信販売などで、弦などはもっと安く購入できるかもしれません。しかし、目先の安さだけにとらわれて、このような技術者(専門家)とのコミュニケーションをみすみす逃すことになってしまうのです。最終的にどちらが「お得」なのか、そのような事も考えてみてはいかがでしょうか?もちろん、通信販売などが悪いと言っているわけではありませんので、その点はどうか誤解のないようにお願いします。
- 毛替えの時
-
これも先に書いた「何かのついでに、楽器も点検を」と同じ事ではありますが、毛替えの時には是非、楽器も一緒に点検をしてもらうべきです。弓だけを楽器店に持って行き、ろくに話もしないで「毛替えお願いします」で帰ってしまっては、もったいないです。できることならば、楽器を一緒に持っていって、技術者と色々な話をし、楽器をひとまわり点検してもらうことが理想です。こうすることで、毛替えや楽器の点検のみならず、色々な知識も吸収できるからです。また、楽器店とのコミュニケーションを図ることもできます。逆に言えば、技術者や楽器店の人とコミュニケーションの図れないような楽器店では、それ以上が望めません。
この「毛替えのついでに」という考え方からすると、点検・調整は最低でも半年〜1年に一度はすべきと言えるでしょう。
楽器は、たとえ弾かないで保管しておくだけでも調整がくるったり、楽器が傷みます。従って、もしも「最近、調整に出していない」と思い当たる方がいらっしゃれば、是非一度点検・調整に出してみてください。本人が思っている以上に、楽器の調整が狂っていることも多いです。この様な場合にはちょっとした調整で、「こんなにも変わるものか!」とびっくりする方も多いものです。また至急の修理を必用とする場合もあります。
なおその時には、技術者と直に話し合い、どのような調整をすべきなのか、自分の予算はどのくらいなのかを事前に話し合ってください。絶対に、楽器だけを預けて、話もしないで帰るような事はしないでください。それでは調整の半分を既に捨てたようなものだからです。
Q&Aに戻る