マイスターのQ&A

ドイツ・ヴァイオリン製作マイスター 佐々木朗

:楽器には弦によってどのくらいの力がかかっているのですか?

:簡単に答えますと、ヴァイオリンの場合でおよそ20kg強、チェロの場合で50kg強、そして5弦コントラバスの場合で150kgの張力がかかっています。
 ただし、当然の事ながら、これらの張力は弦の種類によっても大きく異なります。また、チューニングのピッチや楽器の大きさによっても弦の張力は変わってきます。


弦の張力の測定値(Q&Aコーナーでは省略。技術関連コーナーを見てください。)


表板にかかる力
 上記の「張力」とは、弦が両端を引っ張る力です。従って、駒が表板を押しつける力はこれよりも若干小さくなります。この値は、おおよその目安として、弦の張力の75%ほどと考えればよいでしょう。
ヴァイオリン族の張力
 モダン・ピアノの弦の総張力は20tを越えるそうです。これはヴァイオリン族とは比較になりませんが、楽器の重さと比較するとそこまで驚くには値しません。例えば20tの総張力のピアノが1tとします。すると1kgあたりの張力は20kgになります。一方、ヴァイオリンの場合には、その重さを0.5kgとすると、20kg/0.5kg=40という大きさになるのです。ヴァイオリン族が、いかに構造的に優れているかが分かっていただけると思います。
 しかし逆のことを言いますと、これだけの張力のかかっている楽器は、よほど丁寧に扱わなければ壊れてしまって当然なのです。従って、私が何度も主張していますように、楽器の取り扱い方はもちろん、ケースにまで神経を払わなければなりません。楽器の「軽量ケース」にばかり目を向けているようでは危険なのです。

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