ある声楽家の方が、アマチュア演奏会における(そこそこ高額な)チケットノルマのシステムについて、自分の考えを述べていらっしゃいました。
 おそらく反感を買う内容だと思いますから、このような事を言うことは勇気のいる行動だと思いました。おそらくプロの演奏者としての責任感から、このような内容を発信したのだと思います。

 一部だけ流し観して、安易な感想を書き込んだりしないでください。この方は冷静に語っていますので。お願いですから最後まで観て、聞いてください。

 実は私も以前から似たような疑問は感じていたのですが、私は楽器職人としてプロの演奏者ともアマチュアの演奏者とも差別無く接しているので、どちらの味方をするわけでもなく、曖昧な考えのままでした。

 上の声楽家の主張をじっくり聴くと確かにその通りだと思います。日本では有料のアマチュアコンサートというマーケットが存在し、それが若いプロの演奏者の金額とバッティングしてしまっているのです。

 「セミプロ」だとか「プロよりもうまい」とかの言葉が色々な場所で聞かれるのです。

 だから日本人は、コンサートチケットの金額で演奏の内容を理解しがちなのです。例えば数万円の外タレの演奏会は素晴らしく、2,000円の若いプロの演奏者の演奏会は、アマチュア演奏と同レベルと。本来ならば、お金を取って演奏すること自体がプロとしての誇りであって、責任でもあるのですが、それをアマチュアも行っているのです。

 もちろん法律的には問題ないのでしょうが、日本の音楽文化を育てる上では、上の動画の内容は「なるほど」とも思いました。
 本来ならば、まだ若いプロの演奏者の素晴らしい演奏会が安く、身近に聴ける機会が増えていたら、日本人の「耳」はもっとよくなるはずなのですが、その辺りのコンサートがアマチュアコンサートと被ってしまい、結果的により高額になってしまっています。

 すなわち、敷居が高くなっているのです。敷居が高くなるだけだったら話は簡単ですが、若い(無名の)演奏者がアマチュアと差別化するためにより高い価格設定を行っている事で、お客が入りません。悪循環です。
 さらに聴衆(お客)側の耳も育たなくて、有名というものしか評価しないような、歪んだ世界になっています。

 こんな事を書くと、アマチュア演奏自体を否定しているようにかんじるかもしれませんが、そうではありません。

 プロのように、一般客からお金を安易に徴収するべきではないと言っているのです。必要経費は全て団員でまかなうとか、または寄付金をつのるとか。

 日本は若い演奏者が育ちません(お金が稼げません)。その原因が全てチケットノルマシステムのせいとは言いませんが、少しは影響があるのかもしれません。

 

補足:実は似たような事は、弦楽器製作、修理・調整技術、販売の世界でもあるのです。

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