私は子どもの頃には八丈島に住んでいました。3月だけに限りませんが、転校生や卒業生が島を出てく「別れ」は何度か経験しました。

 八丈島の「別れ」には2パターンがあり、1つは飛行機です。離陸前の飛行機の小窓から、転校していく友達がいつまでも手を振っているのが見えるのです。しかし、飛行機の場合にはあっという間に飛び去ってしまいます。あまりにもあっけないのです。

 ところがもう一つの「別れ」の船の方は感動的です。お見送りする人側が事前に港の売店で紙テープをたくさん買って、それを転校していく友達に渡しておくのです。そして、船の出発するときに甲板から投げてもらいます。場合によっては、赤の他人のテープを受け取ることもあります。または、見送る側が下からテープを投げ上げたりもします。もちろんそのような場合には目的の友達がそのテープを受け取ることは不可能なのですが、それで良いのです。船の甲板に届かない紙テープが、船の側面に跳ね返されて次々と海に落ちていきます。

 船はゆっくりと岸を離れていくのですが、紙テープで転校していく友達と、見送る我々とはまだしっかりと繋がれていると実感します。その時にたなびく無数の紙テープの綺麗なこと・・・。

 ところが紙テープのロールはスルスルと伸びて次第に小さくなり、ついに手元から抜け落ちてしまうのです。「ああ、ここまでか」と思う瞬間です。そして次は友達が見えなくなるまで、手を振ります。

 船の別れは、今思い出しても感動的です。今でも同じような光景が続いているのでしょうか?

 ちなみに、船での別れの時の間抜けパターンは・・・、転校生が紙テープを投げるときに、テープの端を握り損ねてテープごと投げてしまうパターン。「おいおい!」って感じです。そのテープを急いで拾って、今度は投げ上げるのですが、上手く届かずに海に落ちたり、甲板に届いたはのは良いけれど誰だか知らない観光客と結ばれたり・・・。しかし、それも良いのです。

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