最近「3D」ばやりです。映画のみでなく、メーカーは家庭用テレビでも3Dテレビを推しているようです。しかし、皆さん3Dテレビ(映画ではなく)を見ましたか?最近は大型電気店でもデモしているのでぜひ見てください。正直言って、私は見るたびにガッカリします。私には立体には見えないのです。どう見ても「飛び出す絵本」のような「まやかしの立体」や、「誇張された奥行き」にしか見えないのです。
 例えば素晴らし写真を見てください。そこには奥行きが感じられ、それどころか時間の流れさえも感じることができます。「時間軸さえも含んだ、立体(奥行き)」とでも言えるでしょうか。なぜ平面の写真でそのような事が起きるかというと、写真の画質と内容が素晴らしいと、脳が自然と「立体化」をするからです。
 すなわち、「自然な立体化」を得るためには3Dテレビなどは必要なく、「高画質なパネル」の開発の方が優先されるべきなのです。液晶テレビに詳しい人ならば知っていることですが、現在の液晶テレビは欠陥だらけです。具体的に言えば、「発色」「残像」「黒浮き」などの問題点が山積みなのです(メーカーは最新機種を発表するたびに「改善した」と言いますが、根本的な改善は全くされていません)。
 本来ならば有機ELパネルとか、根本的な改良をしなければこのような「自然な立体化」を表現できるテレビとは言えないのですが、そのような「本質的なモニタパネル」の開発は開発が打ち切られているくらいです。ある意味時代と逆行してしまっているのです。
 なぜそんなことが起こっているのか?それは開発費がかかるからです。逆のことも言えて、メーカーは本質的な「高画質」よりも「まやかしの3D」で一般顧客をだました方がもうけになると考えているのでしょう。
 なぜ私が「3Dテレビ」を目の敵のようにけなしているのかというと、こんなテレビが家庭に入ってしまうと、「飛び出し」を強調するような下品な映像が蔓延すると考えられるからです。
 音楽でも全く同じです。かつてオーディオで「低音」とか「高音」とかメーカーが盛んに宣伝した内容は、下品な「ドンシャリ音」であり、結果、ほんとうの「高音質」ではなくて素人にうける「安物の刺激音」が蔓延したのです。結果として、オーディオの世界は自分の首を絞めるように衰退しました。
 映像の世界でも「安易な飛び出し(3D)」に危うさを感じてしまいます。
 これは弦楽器の世界でも同じです。通販を主とする安物(技術が伴っていない)が蔓延すると、本物の素晴らしさを知ることができずに、または本物に触れあう機会ができずに、結果として本物が衰退してしまいます。現在、その危険性をヒシヒシと感じています。
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 3Dテレビを否定的に書きましたが、映画の場合は話しが全く別です。映画の場合には「視聴環境」と「内容」が事前にはっきりしている「非現実体験の場」だからです。さらに映像の制作費も桁違いですし。

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