最近、チェロのエンドピンストッパー板の話題ばかりで、ヴァイオリンの方には申し訳ありません。
皆さん、ご自分が使っているエンドピンストッパー板について、多くの方は「滑りにくさ」という価値観以外の、「具体的な感覚」は、持っていないのではないでしょうか?
実は私も、今回実際に「理想的なエンドピンストッパー板の製作」という具体的な行動を起こす前までは、あくまでも思考実験的な、または理論的な空論でしか、エンドピンストッパー板を捉えていませんでした。
実際に製作して、そして音を出してみたところ(私のエンドピンストッパー板を購入してくださった所有者の感想も含めて)、初めて、私のこれまでの理論と、現実の現象とがほとんど全てにおいて一致することを実際に確認できました。凄いでしょ?
その違いをいくつかだけですか、具体的に説明してみます。もちろん皆さんは、私の製作するエンドピンストッパー板は所有していませんので、「エンドピンを床に刺している状態(=理想的なエンドピンストッパー板)」と「通常の製品」との違いと考えてください。
1. 単純な意味での、滑りやすさ
「ズルッ」という、あれです。これは皆さんが大きく意識されていることですから、説明は省略します。
2. 微細な意味での、滑りやすさ
私の感覚では、「楽器の、床への突っ張り」として感じます。
多くの方は、エンドピンストッパー板が「1.」の様に、大きくズリ滑らないと、それで滑ってないと思い込んでいます。しかし実際には、無意識の内に、楽器を滑らせないように、チェロを浮かせ気味にバランスコントロールしながら演奏してしまっているのです。これは特にホコリっぽい床で、滑りやすくなっている場合には当然ですが、一見滑らないと思えるような紐タイプの板の場合にも横にずれないようにバランスを取っているのです。また、裏がゴムタイプの物で滑ってないように感じていても、実は微細に滑っているのです。それを滑らないようにコントロールしているのです。
その証拠に、楽器を直接床に刺して演奏するのと、通常のストッパー板(紐タイプでなくても)で演奏するのとを比較してみてください。床への突っ張り感覚がまるで違うはずです。もちろん、エンドピンストッパー板を使っている方が、突っ張り感は小さく感じます。これはすなわち、エンドピンの先端が微細に揺れて(滑って)しまって、音質劣化に繋がっているだけでなく、無意識に滑らないようにして弾いていることで自分自身の演奏スタイル(ボウイング)にまで悪影響を及ぼしてしまっているということなのです。
ちなみに、音質の違いは、ピチカートで比較すると、簡単に違いを確認することが可能です。
3. エンドピンストッパー板の振動
先のブログにも書きましたが、エンドピンストッパー板が意図的に共鳴するような共鳴構造の製品もあります。そのような製品を使って、それが好みであるというのなら、もちろんそれはそれで構わないと思います。しかし、私の「理想形の理論」という理論上の話では、共鳴するのは良くないのです。楽器の音が劣化してしまうのです。
4. ゴムのようなダンピング性能
本体がゴムでできた、または厚手のゴムを使っているエンドピンストッパー板も多いです。これについても、「それが好みだ」というのなら、私は否定はしません。しかし、これまた「原理」的な考え方をするのなら、ダンピング性能がある製品(素材)は、振動エネルギーを吸収してしまって、熱エネルギーに変換してしまうのです。すなわち、音の劣化に繋がってしまいます。これもまた、ピチカートを数回するだけで、その違いは感じることができるはずです。また音量が小さくなってしまっている事にも、気づかれる人は多いと思います。
私が今回の記事で特に主張したかったのは、「2.」についてです。床への「突っ張り」感こそが、想像以上に大きな要因なのです。
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