弓先まで意識を持って弾くことは、演奏技術（だけ）ではできません。科学で行えます。

　私が「オイストラフの演奏（音）」は理にかなった弾き方をしていると主張しているのは、ご存じと思います。

　オイストラフは「理」にかなった演奏技法を活用して、理にかなった音を出しているのです。だからレコードから素晴らしい音が聞こえてくるのです。

　たんなる演奏が上手な演奏家ではないのです。演奏が上手な天才的演奏家なら、オイストラフ以外にもたくさんいます。

　私のこれまでの数多くの経験からくる感想では、プロの演奏家は当然として、アマチュア演奏者達も、「演奏至上主義者」と言っても良いくらい、「良い音は、演奏技術からのみ生まれる」という基本的な考えを持っていると感じています。

　だから演奏（レッスン）は頑張っているのです。

　しかし、「それ以外」に対しての意識が低すぎます。それは「科学」または「道具」に関しての勉強です。私はそれを「物理」と例えたり、「理」と例えたりします。

　話をもどして、オイストラフのボウイングが、弓先まで音が抜けないで、とても丁寧に発音されているのはレコードから確認できます。これは、オイストラフの天才的演奏技術だけでなく、物理的に理にかなった道具と運動からなる、物理現象なのです。

　演奏から「物理」または「理」を切り離すことは絶対に不可能です。

　その証拠に、私の考えの「真の意味での性能の良い弓」を購入して、私の主張する「圧力を意識したボウイング」を行うことで、どなたでも、オイストラフのようなとは言いませんが、弓先まで意識が保てるようになるのです。

　私は嘘はつきません。周りで私の工房にて弓を購入した方がいらしたら、感想を訊いてみてください。おそらく、その方も同じ感想を言うと思いますから。