私はよく、「コントラバスの音を意識すべき」と主張しています。これは低い音域の楽器という意味でもあるのですが、「自分が弾いているのと違う種類の楽器を意識する」という意味も含まれています。
例えばヴァイオリンを演奏している方が、他のヴァイオリン奏者の演奏を参考にすることが多いと思います。もちろん、その方法は基本です。
しかし僅かではありますが、危険性も含んでいます。
ヴァイオリン奏者が、他のヴァイオリン奏者の演奏を見た場合、客観性が生まれにくいのです。どうしても他人のヴァイオリンに、自分のヴァイオリンを重ね合わせてしまいがちなのです。場合によっては、ライバル心が芽生えたり、好き嫌いの感情が芽生えたり、または劣等感を感じてしまう方もいるかもしれません。
すなわち、無意識に自分自身を重ねてしまいいがちなのです。
ところが他の種類の楽器の場合には、もっと他人事として観察できます。すなわち、客観性が生まれるのです。客観性からはさまざまな素直な発見が生まれます。
これは我々職人にも全く同じように当てはまります。
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