私はよく、「カントゥーシャ作の楽器は音が良い」と書いています。おそらく、このブログだけを読んでいるほとんどの方は、カントゥーシャ氏の弟子の私の、たんなる内輪贔屓からの発言と思っていることでしょう。

 しかし、カントゥーシャ作の楽器を所有している方には、私の言っていることが理解して頂けると思います。

 カントゥーシャ作の楽器は、どの音域でもほとんど詰まる音がしないで、自然な発音をするのです。だから響きが良いのです。これは何もカントゥーシャ作の楽器だけの話ではありません。良い楽器とはそういうものです。

 ちなみに、箱鳴りの楽器の発音特性とは異なります。そこが一番勘違いされるところです。

 全ての楽器には大小こそ有りますが、数多くの共鳴モードが存在します。「共鳴」というと良いイメージに感じるかもしれませんが、大きな共鳴モードは、実は音階の響きを阻害してしまう物なのです。その共鳴モードの中で一番有名なのは、チェロの「ヴォルフ音」で、二番目に有名なのは「空洞共鳴モード」です。それらの度合いによっては、共に楽器の響きに悪影響を与えることが多いのです。

 このような悪影響を及ぼす共鳴ポイントは、何もチェロ特有のものではなくて、ヴァイオリンやヴィオラにも同じように存在します。

 例えば、ヴァイオリンの2番線(A)の開放弦(またはその半音上くらいの音)は、鼻が詰まったような音の楽器が多いです。このような楽器は、他の弦の音を鳴らしている時にもAの開放弦の響きが出ないので、楽器全音域の響きが悪いのです。

 ヴィオラの場合には1番線のAの開放弦で鼻が詰まった音がする楽器がほとんどです。これも楽器音域全体の響きを悪くしている大きな要因のひとつなのです。

 もちろんこれらの発音特性だけで良い楽器が見分けられる程単純なものではありませんが、「開放弦の響き特性」がとても重要な要因の一つであることは確かです。だから、コンサートなどを聴きに行ったときに、その楽器の音は、演奏前の調弦の音を聴いただけで大体分かってしまうというのも、そういう理由からなのです。

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