先日、普段からの楽器の取り扱い方がとても丁寧なお客様のヴァイオリンの「楽器のニス磨き」を行いました。

 この楽器、普段から丁寧に扱われているので楽器のニス表面もとても綺麗です。演奏後にも清潔な布で丁寧に(薬剤を使ってとか、力をいれて拭くという意味ではありません)松ヤニを拭っているだと思います。だから楽器が綺麗なのです。

 しかし、そのような楽器でも、数年経つと表面に松ヤニの層が僅かに付着してしまい、いくら清潔な布で拭き取ったとしてもそれらを落とすことはできなくなってしまいます(ニス表面がザラザラするのでわかります)。

 

 しかし、それで良いのです。それが正しい使い方です。

 

 というのは、楽器の技術の専門教育を受けていない素人が、薬剤とか、ポリッシュ剤などを使って楽器を磨いてしまうと、楽器を傷めてしまう可能性が高いからです。

 多くの方は「楽器を傷める」というと、不適切な溶剤を使ってニスを傷めてしまう事だと思い込んでいます。もちろんそれは最悪です。しかし、例えニスを傷めないポリッシュ剤(磨き剤)で楽器を磨くとしても、次のトラブルがとても多いのです。

 それは、f孔周辺の板厚がとても薄い部分を割ってしまうトラブルです。

 f孔周辺の磨き作業は、専門教育を受けた技術者の私でさえ、とても難しい作業です(大げさに言っているのではありません)。これが普通の方に出来るとはとても思えないのです。同じく、駒の周辺とか、指板の下側の磨き作業も難しいです。

 それでは、「磨きやすい、安全な部分だけ磨けば良い」と思っている方が多いのですが、そうすると、楽器の磨きにくい部分だけに汚れが酷く堆積してしまい、楽器の状態が悪くなってしまうのです。なぜなら、所有者本人は、普段から楽器を自分が磨いているという自負心があるので、お金を掛けてまで磨き作業、またはメンテナンス作業を依頼しないからです。

 ご自分でポリッシュ剤などを使うことは、私はお勧めしません。

 それでは何をすればよいのか?
 1.手を石鹸で丁寧に洗ってから楽器を扱う癖をつける。
 2.楽器拭き布を洗濯して、常に清潔に保つ。
 3.楽器拭き布を、汗用と松ヤニ用の2枚別ける(大きなサイズの布は嵩張って、拭き取りが雑になりがちですので、”お手拭き”サイズくらいがお勧めです)。
 4.演奏後に、清潔な楽器拭き布で力を入れずに、丁寧に松ヤニを拭き取る。
 5.気になることがあれば、直ぐに専門家に相談に行く。

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