2年前までですが、私の工房のスピーカーにはB&W社のCM1 S2という小型スピーカーを使っていました。このスピーカー、小さいのに低音も豊かに出て、しかしB&W特有の繊細さもあり、とても満足して使っていました。

 その時に併用していたアンプがAccuphase E-470というAB級のプリメインアンプです。このアンプと、CM1 S2の組み合わせは実に素晴らしいと、お客様にもお勧めしていたくらいなのです。工房の音はこれが完成形かな?くらいに思っていたくらいです。

 ところが、併用していたELPレーザーターンテーブルの音があまりにも素晴らしく、これまで私が感じたことがなかった「レコードの中低音の音場感と解像感」を日に日に感じるようになっていったのです。オイストラフ他、巨匠達の演奏が、今までとは違った感じ方をして聞こえてきたのです。

 そこでふと思ったのです。「アンプをAB級のE-470から純A級のE-650に交換したら、より中低音の再生能力が増すのでは? もっとオイストラフの真の音に近づけるのでは? 弦楽器の音響の核心に寄り近づけるのでは?」と。

 というのは、以前E-470を購入するときに、オーディオショップでE-650とも比較していて、E-650の方が中低音の再生能力は高いと感じていたからです。
 私のイメージでは、AB級のE-470はスピード系の高回転エンジン型スポーツカーのような感じで、純A級のE-650はしっかりとした押し出し感のある、トルク重視の高級車のようなイメージです。

 結果、その時には価格とか消費電力とか、併用スピーカー(CM1 S2)の事も考えて、E-470を選んだのでした。

 ところがELPレーザーターンテーブルの再生音(特に中低音)をさらに追求しようと、2年前にE-650に買い替えたのです。それでお気に入りのB&W CM1 S2に繋いで音を出してみたところが、「ガ~ン!」です。

 中低音がボケボケになってしまいました。オケのコントラバスの音の切れが悪くなって、音場が濁ってしまいました。まあ、これには理由もあります。私の工房ではスピーカーを壁に取り付けているので、元々、低音が出る代わりに音場はどうしてもボケ気味になりがちだったからです。
 もちろん、バスレフダクトの調整だとか、壁固定の微調整とか、色々試行錯誤はしたのです。しかしダメでした。

 良いつもりで行ったアンプのグレードアップがこれほど空振りに終わってしまうとは残念でした。・・って、諦めるわけにはいきません。

 それで次に考えたのは、解像感の高い、音が硬めのスピーカーへの交換です。

 サイズとかを考えたら、思いつくスピーカーは一つしかありませんでした。それは以前私が試聴して良いと感じなかったB&W 805D3です。
 それでアクリル板を加工して、専用壁掛けホルダーを製作して、今に至っています。

 E-650との相性は、CM1 S2とのペアよりもはるかに良いと思います。

 結果何が言いたいのかというと、AB級のE-470の上級機が純A級のE-650という事はなくて、別の種類(タイプ)のアンプと考えた方が良いという事です。だから相性の良いスピーカーも変わってきます。

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