弓が震えてしまうのは、演奏技術が上手下手の問題ではなく、「理にかなった運動」をしているかどうかという、物理的な要因によるものなのです。

 もっと具体的に言えば、「理にかなった道具を使って、理にかなった運動をしているか」という問題であり、それは「理にかなった性能の弓」でしかなし得ない物理法則なのです。

 もう聞き飽きたかもしれませんが、きちんとした腰の強い弓竿(多くの方の高級弓はペコペコなのです)で、正しいボウイングをすると、弓は吸い付きます。

 このように基本的には、性能の良い弓(一般に多く売られている単なる高級弓とは違うのです。理にかなった弓なのです)を購入して、理にかなったボウイングの運動(演奏ではありません。運動です)をおそわっただけで、それまで悩んでいた弓の震えは、ピタリと収まります。

 ただ、「弓の震え」の別の要因もあります。

 それは間違ったヴィブラートが原因で、弓の震えが誘発されてしまう仕組みの「震え」です。先の弓の性能の低さ(ペコペコ弓)から起きる震えとは、まったく仕組みが違います。

 さてこの間違ったヴィブラートとは何かというと、私のホームページで以前にも説明したことがあるのですが、指板を縦に揺れ動かしてしまう、「痙攣ビブラート」です。正しいヴィブラートは、指板が上下に揺れません。しかし間違ったヴィブラートは指板が上下に揺れ動かされてしまい、それに伴って弓が暴れてしまうのです。そして震えになってしまいます。

 このように、自分の行動を客観的に観察することで、比較的簡単に解決(向上)の入り口を発見できるのです。

 難しい大きな難問は、比較的簡単な小さな要素に別けて、それぞれを分析して解決していくことで、大きな難問を解いていくのです。これは科学では当たり前の技法です。
 逆の事も言えて、大きな複雑なプログラムを構築するためには、ちいさなブロック単位のプログラムを作り、それを組み上げていくのです。大きなプログラムをいきなり考えてしまうと、目の前が見えなくなってしまうからです。

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