同じ製作者の同じようなチェロ弓を再び購入

　今回のチェロのお客様は、私の工房にて以前チェロ本体も弓も購入してくださった方なのです。

　このお客様に限らず、私の工房にて高い価格帯（一番上のグレード）の良い弓を購入された方で、さらに良い弓を求める方が多いのです。それは弓の真の重要性を、頭（これが重要）も身体も実感したからなのです。

　しかし通常ならば、私はこのように言ってお断りします。

「お持ちの弓の性能を大きく上回る性能の弓はもう持ち合わせて無いので、似たような性能の弓を購入する意味はないのでは？　別の製作者の弓で、違ったキャラクターの高性能な弓でしたら有りかもしれませんが････それでも、もう１本を購入する意味があるでしょうか？」

　みたいな感じです。

　ところがこのお客様は、「僅かであっても性能が良ければ、購入する意義はある」ということで、同じ製作者で同じようなランク（すなわち一番良いグレード）のチェロ弓を追加購入されたのです。

　私とお客様とで、色々チェック（弓竿の剛性など）して、「今までの弓よりもほんの少し上かな？」という結論のもとで購入されました。

　後日、「今まで出なかった音が出せるようになった」との感想を頂きました。

　とても前向きな追加購入の考え方で、私にとっても勉強になりました。これまで私はお客様のためと思って、「効率の良いお金のかけかた」をアドバイスしていたつもりでした。しかしそれは、金銭的な事は別として、お客様の向上心を摘んでしまう行為だったのかもしれないからです。

　アドバイスするのは難しいのです。