私がカントゥーシャ工房に就職して、噂では知っていたのですが、その製作精度に驚きました。

 それと同時に、「製材」の理想を徹底的に追求していました。例えば表材に割り材を使うのはもちろん、フッターライステン(ライニング)という薄い内張り材さえも、薄割り材を基本としていました。それは木材の繊維の目切れを可能な限り排除するためです。

 ちなみに、いくらカントゥーシャ氏が繊維が真っ直ぐな上物の割り材のマツ材を使っているとはいえ、厚み3~4mmくらいに薄く剥ぐように割るのは至難の業です。さらに仮に薄く割れたとしても、完全な平面ではありません。若干波打っていたり、捻れたりしているのです。
 それらを平板の上に押しつけながら、可能な限り繊維を真っ直ぐに伸ばしながら、フッターライステンの厚みまで薄く削っていくのです。こうすることで繊維が目切れ無いのです。ここまで見えない部品にまで拘っている製作者は少ないと思います。

 もちろん、ネック材、指板材なども「木目(繊維)」を追求しました。木材の品質へのこだわりも当然です。

 それらが、結果的に長年に渡る楽器の歪みの少なさに繋がり、音の良さに繋がるのです。

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