先日ヴィオラの試奏にいらしたプロの演奏者の方が、私のお勧めするヴィオラとご自分のヴィオラとの鳴りの違いに、「なるほど」と納得されていました。

 実はこの方、少し前に私の工房にてヴィオラの弓を購入して、「自然な圧を使ってのボウイング」というものを実感していたのです。だからこれまで普通に使っていたご自身のヴィオラにじれったさを感じていたのです。

 プロ、アマに限らずヴァイオリン~チェロに至る多くの方(特にヴァイオリン)の弓の性能は低いです。高価な弓ほど低いものが多いのです。すなわち上手な方ほど低い弓を使っていたりするのです。

 矛盾しているように感じるかもしれませんが、ちゃんとその理由も説明できます。

 さて、このように性能が低い弓で演奏をしようとすると、どうしても弓のスピード要素を活用したボウイングで音を出そうとします。そうして弦を振動されることこそが、楽器を鳴らすことだと勘違いしているのです。

 しかし本当に良い楽器とは、「自然な圧」によって響板をドライブして、ダイナミックレンジが広い楽器(深い楽器)こそが良い楽器なのです。何度でも言いますが、それを体感(実感)するには、良い弓の購入が絶対条件です。

 話が戻りますが、なぜ良いヴィオラが少ないのかというと、ヴィオラという楽器自体が元々構造上鳴りにくい楽器という事が大前提だからです。すなわち無理がある楽器なのです。

 さらにヴィオラの需要自体も少ないので、ヴィオラをまともに追求している製作者や技術者も少ないのです。モコモコした音、詰まった変な音がヴィオラだと思っている人が多いのです。

 さらに演奏者自体も、良いヴィオラというものを体感したことがないので、全てが悪い方(間違った道)へと進んでしまっています。ヴァイオリンの場合だとレベルの高い楽器も多いので、どこかでそう言った楽器を体験出来たりするものですが、ヴィオラだとなかなかそういった「良い体験」もできないのです。だから楽器にお金をかけません。

 悪循環です。それで良いヴィオラがとても少ないのです。

 ヴィオラは本当に難しいです。チェロもヴィオラほどではありませんが、同じです。

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