音楽の表現とは自分一人では完結できません。

 例えば自分独りでどんなに気持ちをこめて熱演したとしても、誰にも聴いてもらえなければ、誰からの反響もなければ、それは単なる自己満足の思い込み行為でしかないからです。

 もっと極端な説明をするならば、「自分で弾いている気持ち」は表現とは言えないのです。反応、感想、物理的な観測が必要なのです。

 すなわち演奏とは自分と相手(聴いている人)によって成り立ちます。これは「距離」と似ています。

 それでは「表現」とは何かと言うと、以前にも何度か説明したことがあるのですが、「聴いている聴衆という生物の、生理的現象を引き起こす、理にかなった操作」なのです。

 「膝の適切な箇所に的確な操作(刺激)を与えることで、生まれる反応」、これこそが演奏の本質なのです。

 私の技術は、常にこの内容を意識しながら追求しています。だから一貫性があるのです。

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