音楽ホールって色々なタイプがあり、そしてそれぞれの音を持っています。だから楽しいとも言えますし、だから演奏が難しいとも言えます。
私の大ざっぱな分類ですが、音楽ホールを分類すると「反響板有りの舞台ホール」と「空間タイプの舞台ホール」に別けられます。
昔の日本の音楽ホールの殆どは反響板有りの舞台ホールでした。しかし80年代くらいからか、「ウィーン楽友協会ホール最高説」みたいな論調が流行り、その影響なのか空間タイプのホールが増え始めました。
オルガンを設置すると、どうしても反響板無しの空間タイプになるという理由も大きいかもしれません。
つい先日、私が聴きに行ったホールもこの「空間タイプ」のホールでした。
さて、反響板有りの舞台と、無しの空間タイプのホールでの音響的な特徴は何かというと、低音の出方なのです。正確に言えば、低音の響き方です。
例えばコントラバスの音だとか、ヴァイオリンの豊かな箱の響きなど、低音成分って楽器の艶を出す重要な要素です。
例えば野外で声を出した時と、室内で声を出した時で、声の太さが変わっているのに気づくと思います(補足)。野外だと声質が細くて、届きにくいです。しかし室内で出す声は、まるで肺の容積まで感じるような太さを持っています。
反響板有りのホールもこのような感じです。
一方、空間タイプのホールの特徴は「ダイレクト感」です。とくに管楽器の音がガツンと届きます。だから管楽器ファンにとっては、空間タイプのホールの方が好みかもしれません。
一方弦楽器は、音が痩せてしまってキンキンしがちです。コントラバスやチェロの低音域、またはヴィオラやヴァイオリンの胴体の音も伝わりにくくなってしまいます。高域はダイレクトに伝わりますが。
楽友協会の音もこの「空間タイプ」の音響特性が出ていて、キラキラした音響特性です。だから金管楽器だとか、ヴァイオリンの旋律の音が際立っているのです。その一方でコントラバスの厚みが出ませんので、コントラバスの人数が必要となります。
もっとも、空間タイプのホールと言っても、一階席壁側と、三階席中央とでは響きも違ってきます。だから「反響板タイプ」とか「空間タイプ」とか、単純に分類するのも浅はかと言えるかもしれません。
いずれにせよ、演奏に限らず、音響も底なしに難しいです。
補足:私が高校三年生の数IIIの授業中、先生が「今日は天気が良いから、中庭で授業をしよう!」と言って、ホワイトボードを持ち出して授業を開始したのです。
ところが先生の声が聞こえなくて、私は「野外と室内の声の通り方はこんなに違うものか」と、未だに鮮明に記憶に残っているのです。