毎年のことですが、ゴールデンウィーク中には調整の楽器が集中するので忙しいです。それも昨日の土曜日で一段落です。

 それらの内の1つに「本格的な全調整」がありました。弓を購入してくださった方の楽器を本格的に調整することになったのですが、いつものパターンとは違ったのが、「私はこの音が気に入っているので、楽器本質の持つ音を変えたくない」という要望から始まったことです。
 即、私は「今の状態は、音も弾きやすさも酷いので、楽器の状態を根本的に変える必要がある」という全く逆の主帳をしました。もちろん、「良い意味でも、悪い意味でも楽器の限界というか、変えられない部分は確実に存在するので、そういった意味では『楽器の本質』は変わらない」とも説明しました。

 弓自体はお客様は満足していただいていたので、あとは調整の結果に満足していただけるのかが不安でしたが、楽器の音も「変わった!」と満足していただいて、ほっとしました。もちろん、出る音は全く違います。音のレスポンスと、深さ(ダイナミックレンジ)が全く違うのです。これは「最初に、弓の性能ありき」の調整理論だから引き出せるのです。

 このように、現在ご自身の楽器や弓、または音に満足していらっしゃる方が、本当の意味で良い状態かというと、そうとは言えないのです。単に、「本当に良い状態、または良いものを知らないだけ」とも言えるのです。

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