私は無量塔藏六氏のもとで基礎を習いました。その当時から私は感じていましたが、ヴァイオリン製作そのものよりも、それ以外の一見「雑用」みたいな仕事の中にそこ「お宝」がちりばめられているのです。「ノウハウ」と言っても良いと思います。
 こうして一本立ちした今現在も、無量塔親方の元で「雑用」の中から学んだ「基礎力」が一番役に立っています。ヴァイオリンの寸法がどうのこうのよりも、それらの方がはるかに重要で、貴重だと言い切っても良いです。
 何度でも言いますが、基礎の上にしか建物は建たないからです。しっかりした基礎あってこその実践なのです。
 ところが最近の学校教育はどうでしょうか?私の子供達の小・中学校では、工作・理科実験、家庭科において「キット」を組み立てるのです。いくら授業時間が足りないとはいえ、これでは一番重要な部分をすっ飛ばして、手っ取り早く「やったつもりになっている」だけではないでしょうか?それとも、教材メーカーの商業主義に毒されているのか?
 本当に大切で貴重なのは、「手っ取り早くない」ところです。「回り道」にこそ宝が散りばめられているのに・・・。何も無いところから、または知恵を絞り出して身近な物を利用して何かを作り出すことが本当の実験であり、工作であり、研究につながると思うのです。
 教育においてキットを使うなんて、その芽をわざわざ摘んでいるとしか思えません。
 これからヴァイオリン製作の道を進もうとしている若者も、恐れず「雑用」や「(一見)回り道」から勉強してください。結果的にそれが一番の近道となることでしょう。
 やる気のある若者は、まずは「弟子の募集」の要項を読んだ上で連絡してください。
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補足
 学校教育のことをぼろくそに書きましたが、娘達の通っていた区立幼稚園は素晴らしかったです。子供達に知恵を出させて工作させたり、絵を描かせたり・・。空き箱などを活用して大人には考えられないようなアイデアがたくさん生まれていました。

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