私の妻の所属するアマオケで、ヴィオラの小さなソロが入る曲のソロが、妻に当たってしまったのです。決して上手だからヴィオラのトップを担当したというわけではなく、たまたま順番で当たってしまったのです。さあ、小さなソロとは言え大変です。
 妻はもちろん時間の都合の付く範囲で一所懸命練習しているのですが、ある程度まで行くとどうしても技術的な壁にぶち当たってしまいます。指揮者からの要求もより高度で具体的なものとなっていきます。
 演奏会まであと1ヶ月を切ったとき、工房で練習の音を聴いていた私は「最後の手段に出るか!」と思い立ったわけです。そうです「性能の高い弓」です。
 もちろん妻が今使っている弓も私が選んだ良い弓なので、私はそれで十分だろとふんでいたのです。しかし今回はそれ以上のものを奮発して・・ということです。皆さんの中には「工房の在庫から選り取り見取り」と思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、弦等ももそうですが、皆さんと同じようにちゃんと購入するのです。従って、そう簡単に新しい弓に替えるというわけにもいきません。
 それで早速、新しい弓で練習してみました。そうしたら妻が「あっ、今まで弾けなかった弾き方ができる!」と。そして個人練習が終わった後に工房に入ってきて、「これは、弾くのが楽しくなりそう」と言ってくれました。
 さて、肝心のアマオケではどう評価されるのか? 私は自分自身の「弓の理論」や工房のこれまでのお客様の反応(感想)から自信はあったのですが、しかし特に身内の話なので、不安が無いわけではありません。「誰からも気づかれなかったら寂しいね」と言いながら、アマオケ練習に行ったのです。
 妻がアマオケ練習から帰ってきて最初に私に言った言葉が、「指揮者にまず最初に、『一週間でどうしちゃったの?』と言われたよ」です。私は「そうりゃそうだ。それが良い弓の性能だよ」と言葉を返したのですが、内心は「やりぃ!」です。音の違いにすぐに気づく、その指揮者もさすがですね。
 さてさて、まるで手の込んだ宣伝劇のように聞こえるでしょうが、これ、本当なのです。

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