昨日、「佐々木さんのミッテンヴァルトの大家さんは、ペールマンですか?」というメールと、このリンクのメールをいただきました。初めて見る動画で、懐かしいです。
私がカントゥーシャ工房に勤めるためにドイツのミッテンヴァルトに行ったとき、カントゥーシャ氏の紹介で、運良く、ある家の小さな部屋を借りることが出来ました(ミッテンヴァルトって田舎だけれど、空き部屋は観光客用に貸す大家がほとんどだから、なかなか下宿先を探すのが困難な町なのです)。その家は動画中のコントラバス製作者のクラーマー氏(私よりも一歳年下?当時28歳くらいだったか?)が結婚を機に、ミッテンヴァルトに引っ越してきて工房を設けるために購入した家だったのです。しかし、引っ越しにはまだ期間があったため、上の大きな部屋は長期観光客用に、そして一階(半地下)の小さな部屋を私に貸してくれたのです。
私がドイツから日本に帰国した直後、私と妻の住んでいたその小さな部屋も壊して、大きな一部屋の工房として作り替えましたが、窓から見える景色は、まさに私がドイツで毎日見ていた景色です。
ちなみにペールマンというのはクラーマー氏のお父さんの叔父さんで、多分直接の跡継ぎがいなかったために、ペールマン屋号をクラーマー父に譲り渡したのだと思います。ただ、クラーマー父は、時代の流れがそういう時代だったこともあって、量産コントラバスを多く作りました。それでペールマン・バスが安物のイメージが定着してしまったのです。
それで危機感を持ったクラーマー父と息子マイク・クラーマー氏(映像中)が手工コントラバスに力を入れるようになったのです。ちなみに手工ブランドはペールマンではなくて、クラーマー・ラベルです。
いずれにせよ、懐かしい!
蛇足になりますが、クラーマー氏が購入する前のこの家の所有者は、以前のヴァイオリン製作者なら誰でも知っている、木材業者のフックス氏の所有家でした。当時のフックスは世界中に木材を卸している景気の良い会社で、手広く商売をしていたのです。それでサウナ付きの大きくはありませんが、立派な家を作ったのです。家には狐のしゃれた吊り看板が掛かっていました(ミッテンヴァルトの町の人はこの家を売却後もしばらく「フックス・ハウス」と呼んでいました)。
しかし私がドイツに行く直前頃、大きな木材卸詐欺にあったようで(詳しいことは知りませんが)、経営状態は急下降していたのです。それでこの家も(製材工場も)売りに出したらしいのです。
ちなみに、私がミッテンヴァルトに居たときにはフックス社はかろうじて営業していて、私もそこから良い木材をたくさん購入しましたが、私が帰国した直後くらいにフックス社は倒産してしまいました。良い木材会社だったのに、残念です。
そんな、色々な想い出もある、懐かしい動画でした。
ちなみにこの写真は、帰国直前にお別れお茶会を開いてくれたときのものです。写真真ん中がクラーマーお父さんと奥さんです。動画中のクラーマー氏が写真を撮ってくれたので、一緒に写っていないのが今となっては残念です。窓ガラスに、目の前に高くそびえるカルヴェンデル山が綺麗に写っています。