よく、ご自分のお子さんの楽器や弓に対して、「就職してから、自分で納得できる物を購入したら良い」というようなことを言っている人が多いのです。
半分の意味では、その通りだと思います。
しかし、半分は、「もったいない」というのが私の正直な感想です。というのは、演奏人生の中で一番集中して演奏して、そして一番の成長期は、身体の成長期と同じで10代~20代前半くらいなのです。
事実、私と同じくらいの年令のアマチュア演奏者なら同感していただけると思いますが、学生の頃に演奏した曲って、いまだに鮮明に覚えていて、けっこう暗譜していたりします。しかし、ほんの数年前に演奏した曲って、全く覚えていなかったりするものです。
このように、自分の成長期に、集中して行った行為のその価値はもの凄く高価なのです。それが、ご自分のお子さんが行っている、今なのです。
演奏の成長期の、その時間密度はもの凄く高いです。そこに効率的な道具(例えば身体の成長に例えるのなら「栄養」)を与えることこそが、費やした時間を無駄にしない効果的、効率的な結果を生み出すはずなのです。
例えば、大学3年生や4年生になって購入するくらいだったら、どうせなら1年生や2年生の時に購入すべきと思います。
子どもに良い道具を与えることは、けっして贅沢ではありません。なぜなら、良い物は結果的に後々まで長く使えますから、結果的に安上がりになることさえあるからです。
これは大人の方にも言えることなのですが、「わかるようになってから購入する」のではなく、「わかるようになるために購入する」のです。なぜなら、良い道具を使わないで、わかるようになることは無いからです。これは我々職人の道具においても同じなのです。