先日、私の工房にて半年前にカントゥーシャ作のチェロを購入してくださった方が調整にいらして、楽器の感想とか、それ以外の雑談とか色々な話しをしました。
このチェロ、とても高価です。もちろんそのお客様が特別にお金持ちだとか、そういうことはないと思います。ごくごく一般的な、とても真面目なアマチュアの演奏者です。
そのような大きなお金を、この私にどうして託すつもりになったのか、説明してくださりました。私も初めてその理由を知りました。
もちろん、楽器の性能が高くて、その音色や弾き心地に納得してくださって購入を決定されたのだとは思っていましたが、もう一つの理由は、私の次のような言葉だったそうです。
「この楽器は、これ以上のものでも、これ以下のものでもなく、価値があるわけでもなく、現在見ているこれが全てです」という説明だったそうです。
すなわち、「目の前に有る楽器の、素」こそが本質であり、私がその本質をお勧めしているのだと理解してくださったのだそうです。
とても嬉しかったです。私も意図的にそう言ったわけではなかったのですが、逆に、だから嬉しかったです。
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