昨日、前回ヴィオラ弓を購入してくださった方が、今度は楽器本体の全整をしにいらっしゃいました。その時に「この弓とても良いです。自分の行おうとする操作が、自分でちゃんと理解できるというか、確認できるです」との感想をいただきました。

 そうなのです。良い弓とは、感覚的に自分にフィットするという曖昧な事ではなく、物理的にちゃんと理由ががあってはじめて、その性能を実感できるのです。感覚ではないのです。物理(科学)なのです。なぜなら「感覚」とは、何の根拠もなく、その時その時で実に曖昧なものだからです。

 以前、やはり私の工房にて弓を購入してくださったあるヴァイオリニストが、「自分はロード自転車にも乗っているけれど、弓も自転車のフレームと同じなのですね」とおっしゃっていました。

 正直、私は自転車には乗らないのでピンとこないのですが、おそらくロード自転車のフレームの剛性と、自分の力の伝わり方(エネルギー効率?)の話しなのだと思います。

 現代のスポーツ界においては、科学は絶対に無視できない話しです。しかし、演奏会では未だに「科学」から目を背けているのが現状です。残念であり、もどかしさも感じます。なぜなら、才能のある人たち(プロもアマチュアも)が、その才能に気づかずに一生を過ごしてしまっているのですから。

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